研究分担者 |
ANUSORN Sidh タイ国チェンマイ県, 衛生局, 局長
PIEN Chiwani タイ国チェンマイ大学, 医学部, 教授
森 章夫 長崎大学, 医学部, 講師 (30039557)
後藤 仁 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (20003072)
福永 利彦 琉球大学, 医学部, 教授 (10029796)
CHIOWANICH Pien Chiang Mai University,Faculty of Medicine,Chiang Mai,Thailand
SIDHIRAS Anusorn Provincial Health Office,Chiang Mai Province,Chiang Mai,Thailand
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研究概要 |
1.健康住民のウイルス抗体調査 昭和61年の現利調査で海抜1,200m以上の山地民族居住地2カ所(A:Phamon,C:San Pakia)と, 各々に的も近い平地2カ所(B:Chom Thong D:Chiang Dao), 及び平地対照としてChiang Mai県北部メコン河流域のFang(E)と, Chiang Mai盆地の中央でChiang Mai市近効のSarapee(F)において建康住民から年令階層別に採血した合計1,072検体について抗体価測定を実施した. (A)日本脳炎(JE)及びデング(DEN)ウイルスに対する中和抗体価の測定:各血清の1:10希釈においてFIウイルス(日本での分離株JaGArー01と, 現地での分離株ThCMP19ーBr), DENウイルス1, 2, 3, 4型に対する中和抗体の有無を検査した結果, 各地点において抗体陽性率は加令と共に増加するが, 高地(A,C)では低地(B,D,E,F)に比べて抗体陽性率が低く, 殊にDENウイルスの場合その差は著明であった. 全体(殊にC,A,F地点)においてFaGAr株よりもpー19株に対する抗体陽性率が高かった. 前回(昭和59年)及び前前回(昭和57年)の調査でE地点はF地点に比べてJE,DENの抗体保有率が低かったが, 今回の調査ではその差は有意でなく, chiang Mai県北部にもJE,DEN両アルボウイルスが侵入していると推定された. (B)JE及びDENウイルスに対するIgGーELISA抗体の測定:概して中和抗体価の測定結果と一致したが, その感度及び特異性共に低い結果が得られた. (C)麻疹, 風疹, 及び1型ヘルペスウイルスに対する抗体価の測定結果:JEやDENウイルスの場合に見られた生活地点の高度による抗体陽性率及び抗体価の差は著明には認められなかったが, 測定に用いたウイルス抗原によって, 採血地点毎に多少の年令別抗体保育率及び平均抗体価の相違が見られた. 2.JE及びDENウイルス媒介蚊の衛生昆虫学的研究 (D)日没後ライトトラップJE媒介蚊成虫の採集とDEN媒介蚊幼虫の採集結果:高地(A,C)ではJE媒介蚊の数が低地(B,D,E,F)に比べて極めて少なく, AとBの中間地点A',A"では高度の低下と共に採集数が増加した. DEN媒介蚊亮虫の数も高地(A,C)では殆ど0であったが低地(E,F)では屋外, 室内共に発生源に媒介蚊の幼虫が認められた. (E)年間を通じたオビトラップによるDEN媒介蚊虫卵の採集結果:E,F両地点共に屋内では年間を通じて媒介蚊虫卵が採集されたが, 屋外では気温が低下する1月から3月ないし4月上旬には採集されなかった. これらの結果は1ー(A)に示した健康住民の抗体調査の結果と一致する. 3.ブタ血清のJEウイルスに対する抗体価測定 (F)AーE地点及びChiang Mai市屠場(F')において採血したブタ血清のJEウイルスに対する抗体価を血球凝集抑制反応(HI)とELISAによる測定した測定結果:HIとIgGーELISAの結果は比較的良く相関したが, IgMーELISA抗体価は一般に低く大部分が100以下で最孝値は800であった. 前回(昭和59年)の調査結果と異なり, 今回は高地(A,C)でもHI640以上IgGーELISA6400以上を示すブタが7頭及び2頭存在し, IgMーELISA陽性豚も5頭及び2頭存在した. この事は高地にもある程度JEウイルスの感染が侵入している事を示唆している. 4.Chiang Mai大学病院患ののJEに対するIgMーELISAによる血清診断 脳炎患者85例, 髄膜炎患者17例, デング出血熱(DHF)患者37例の血清231検体と, 髄液128検体について実施した結果:それぞれ28名(32.9%), 2名(11.8%), 3名(8.1%)が陽性を示した. 間接法とIgMー捕捉法の一致率は血清については89.2%, 髄液については80.5%であった. 5.JEワクチク野外接種実験追跡調査 昭和59年以来Chiang Mai県のPrao,Mae Taeng,Chiang Dao3群において5ー14才の小学校児童3,500名にJEワクチンを接種したが, 現在までこれらのワクチン被接種者から脳炎患者は発生していない. 一方, ワクチンを接種されなかった同地区, 同年令の対照者3,700名からは1名の患のが発生している. 全体の数が少ないので, この差が統計的に有意であるとは云えないが, 参考までに上記3群では昭和60年に全体で20名の脳炎患のが発生している.
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