研究概要 |
昭和61年度の現地調査では, ネパール中部の標高100m〜5,000mの地域において野外調査を実施し, 4,600点の隠花植物関係の試料を収集した. 昭和62年度には, これら収集試料の整理・標本化と分類学的研究を行った. 標本は国立科学博物館の標本庫に保管されている. 研究成果の一部は昭和63年6月に国立科学博物館より出版予定の「ヒマラヤ産隠花植物,第1巻カトマンズ盆地」(B5版, 英文250頁)に収録される. 収録論文の問題と概要を分類(掲載)順に記す. 著者名省略. 1.カトマンズ産監藻類:気生性, 半気生性の産地からの藍藻を分類学的に研究し, 63種を同定・記載した. この内46種はネパール新産である. Camptylonemopsisの2種, C.contortusとC.longissimusを新種として命名記載した. 2.カトマンズ谷産細胞性粘菌目録:ゴカルナとナガルジュンの土壌試料から分離された細胞性粘菌を分類学的に研究し, 14種を同定記載した. そのうちAcylosterium sp.,Dictyosterium discoideum,D.monochasioidesはネパール新産である. 3.ネパール産変形菌の1新種Stemonitis laxifila:スワヤンブの林内の樹上で採集された変形菌をStemonitis属の1新種S.laxifilaとして命名・記載した. 4.カトマンズで採集されたユーグレナ類:カトマンズ産のユーグレナ類, Euglena,Phacus,Trachelomonas,Petalomonas,に属する25分類群を同定・記載した. 5.カトマンズ産の群体性オオヒゲマワリ目:カトマンズ産土壌から分離・培養されたオオヒゲマワリ目の藻5分類群を同定・記載した. 6.カトマンズ産糸状緑藻類についての小報:カトマンズ産土壌及び, 現地で接種された粗培養から糸状縁藻を分離・培養し, 9種を記載した. Uuonema gigasとGongrosira papuasicaの遊走子,Uronema confervicolumのアキネート, 3種の培養下における形態変化について報告した. 7.ネパール産クロロコックム目の数種:カトマンズ産土壌および現地で接種された粗培養から分離したクロロコックムの藻を観察し, 11種を同定・記載した. この内10種はネパー
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ル新産である. 8.ネパールの水棲菌, ミズカビ科の種類:カトマンズ産土壌から分離培養した水棲菌の内, ミズカビ科の9種をネパール新産種として記載・報告した. 9.ネパール産ケカビ目菌類:カトマンズ産土壌からケカビ目菌類88株を分類した. 培養上の性状, 形態学上の特徴により分類し, 13属24種5変種を同定・記載した. この内16種4変種はネパール新産ぶある. 10.ネパール, カトマンドゥ谷及びその隣接地域で見いだされたさび菌:ネパール, カトマンドゥ谷及びその隣接地域で見いだされた17種のさび菌について, 新たな地理分布と新宿主を報告した. その内, Coleosporium anemones,Puccinia kyangjinensis,Uromyceshimalaicusを新種として命名・記載した. 11.ネパール産黒穂菌3種:2新種, Sphacelotheca himalensis,Anthracoidea nepalensisを含む3種の黒穂菌を記載した. 12.カトマンズ産きのこ類の新記録:ネパール新産の10種のきのこを同定・記載した. 13.カトマンズ産ベニタケ属:カトマンズ産ベニタケ属の10種を同定・記載した. この内7種はネパール新産である. 14.ネパール産マツリーフリター生息不完全菌類:カトマンズとトリスリ谷のマツPinus roxburghiiとP.wallihianaのリーフリターから不完全菌7属27種を分離・同定・記載した. 15.カトマンズ地域のゲジゲジゴケ属とウメノキゴケ属:カトマンズ産の地衣, ゲジゲジゴ係14種とウメノキゴケ24種を記録した. この内それぞれ3種と11種がネパール新産である. 16.分布上注目すべきカトマンズ谷の蘇類:カトマンズ産蘇類18種を記録した. この内3種1変種がネパール新産である. 17.中部ネパール, カトマンズ地域のハイゴケの蘚類:カトマンズ産蘚類はハイゴケ科の15種を記録した. 18.カトマンズの数種のシダの染色体数:カトマンズ産シダ類の9種, 1雑種の細胞学的研究を行った. 新サイトタイプの存在とサイトタイプの新分布が明らかになった. 19.ネパール, カトマンズ産のシダ植物の分布図(1):シダ植物44属80種のカトマンズでの分布を調べ, 種ごとに産地名と標本番号を記録し, 地図上に図示した. 今回の研究報告に収録できなかった研究成果は, 昭和63年秋に行われる第2次現地調査の報告書(昭和65年中に出版)に収録される予定である. 隠す
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