研究概要 |
本研究は, 申請者らが表記の研究課題にもとづき昭和61年度に実施した現地調査の成果を総括し, あわせて当該研究・調査の今後の進路を明らかにすることを目的とするものであった. なお, 本研究は, アルリカ合衆国における伝統的建築物の保存・再生・活用の実状に関して, (a)伝統的民家などを移築・保存・公開する施設(野外博物館), 伝統的民家などを中心にそれをとりまく歴史的環境を公園化した施設(歴史公園), 伝統的民家などによって構成される町並みを修復・活用するために処置を施した地域の実状に注目し, (b)日・欧・米における具体的な事例を集積し, (c)それらを比較研究し, (d)伝統的建築物の保存・再生・活用をめぐる理論を提唱することを目的とする研究の一環をなしている. その目的にそって, まず, 61年度調査において収集された諸資法の整理を行なった. これらの地図・案内書・小冊子・研究紀要・写真などは, 日本においては入手が困難なものが大半であり, 申請者らが現地で行なった観察やヒアリクグの内容とともに, 本研究における貴重な資料となるものである. さらに, 整理の終了した資料について, それらの分析を試み, その結果を「調査概報」として記述し, 刊行した. その内容は, 分担課題別に当該課題の状況を概観した概論と, 調査施設を個々に記述した各論, および参考図版からなっている. 概論においては, 関係施設・地域の所在・分布・特色・傾向性などの概要を示し, 全体として本研究の最終目的とする理論の構築に向けて日・欧・米の比較を試み, またアメリカ独自の歴史・風土・制度などについての指摘を行なっている. 各論は, いわば事例集であり, 調査対象として施設75について, おのおのの状況を名称・所在地・規模・内容など項目にしたがって丹念に記述することに努めた. これら具体的な施設にそくした情報の集積は, 本研究の重要な課題の一つであり, 相当量の頁数をさくことになった. 参考図版は, 今年度に整理を行なった諸資料のなかから, とくに注目されるものを選択してかかげた. これらの作業を通じて, 当該研究の今後の展開, 次年度以降の研究計画の立案なども進行させることができた. すなわち, 情報・資料の収集という点では, 61年度調査においてはサンプリーグにとどまった合衆国中西部・南部諸州, さらにアメリカ原化民居住地域などについて, 今後, 61年度調査地域を同程度の精度で現地調査を行なう必要があり, 61年度調査に際してえられた資料などにもとづき, それらの調査対象のリスト・アップを行ない, 現地との連絡も進みつつある. なお, 申請者らは, この成果の一部を申請者らの主宰する国立民族学博物館の共同研究会で報告するとともに, 同館の公開構演会"みんぱくゼミナール"においても発表した.
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