研究概要 |
本研究は,第二次世界大戦中・戦後の連合国軍の対日占領における教育改革構想の形成およびその施策の実態に関する在米史料を総合的・系統的に調査・収集・整理して,戦前・戦中期から戦後期にわたる日本教育史の研究に国際的な視野を導入するとともに,従前未発掘であった史料を広く学界に提供することを志向して展開された. 調査対象史料は,次の二種に大別される. I.日本内地および日本植民地・日本軍占領地域から連合国軍により接収された教育関係資料・図書で,現在米国内に存置されているもの. II.対日占領中に連合国諸機関および連合国軍最高可令官総司令部(GHQ/SCAP)による構想・実施された教育改革に関する資料で,現在米国内に存置されているもの. これらの資料について,1980年度に予備調査(研究代表者および研究分担者2人の計3人,2か月渡米調査),1981年度に本調査(研究代表者および研究分担者全員の計8人,3か月渡米調査),そして1982年度に日本国内において総括調査を施行した. これらの調査は,全米26州の38機関,21人の当事者・関係者を対象として. その調査研究の概略は下記のとおりである. I.連合国軍の対日接収史料中の教育関係史料について 米国議会図導館に集中保存されている米軍接収図書資料をはじめ,メリーランド大学ゴールドン・W.プランゲコレクション,ミシガン大学東亜図書館所蔵資料等について調査し,現在日本国内で見出すことの困難な旧植民地・占領地域用教科書などを調査し,マイクロフィルムワリールに収集した. それらについてのカードを作成し,議会図書館に寄贈し同館での接収資料整理事業に寄与することも行なった. II.連合国軍の対日占領教育改革関係史料について (1)機関文書: 連合国側諸機関の対日教育改革関係史料 1.連合国総体に関するもの. 極東委員会(FEC),対日理事会(ACJ)等について調査収集した. 2.米国政府の対日教育改革政策関係史料,米国国務省記録,国務陸海軍等調整委員会(SWNCC),米国陸軍民事部(CAD)等について調査収集した. 3.連合国軍最高可令官総司令部(GHQ/SCAP)の対日教育改施策に関する史料 A.各部局文書,民間情報教育局(CI&E),民政局(GS),高級副官部(AG),民間史料局(CHS),民事局(CAS),四国軍政府等について調査収集した. B.当事者私家文書,米国対日教育使節団員(全27人)のうち20人について調査収集した. また民間情報教育局(CI&E)関係者のうち15人について調査収集した. 本研究は,米国の関係諸機関,生存する当事者および関係者等から予想以上の好意的な協力をえて,当初の計画を上まわる成果を挙げることができた. このような総合的な調査研究は,日本国内においても初めてである,米国においてもかつてなされたことがないので,今回の調査研究により初めて発掘された史料も数多い. これらの史料は,研究代表者の所属する国立教育研究所にすべて保存整理されており, 現に内外の研究者の利用に供している. この成果は和文報告店「占領期日本教育に関する在米史料の調査研究」および英文報告書「Outline of Historical Materials Concerning Japanese Education Reforms under the Allied Occupation」としと,1988年3月に刊行された.
|