研究概要 |
中部エジプトのアコリス遺跡の主として考古学的研究によってギリシア・ローマ時代のエジプト文化を解明することを目的とする. 発堀調査によって得られた遺構, 遺物の実測図や写真をもとに, アコリス遺跡についての考古学的研究ならびに銘字学的研究を二つの主要な方針として, 英文の概要報告にその研究成果をまとめた. 銘文関係では, プトレマイオス朝の王妃ベレニケのカルトゥーシュが確認されるとともに, ハトホル神殿入口のグラフィティーのうち, ヒエラティークの部分が解読された. ヒエラティークはソベク神を祀ったプトレマイオス朝の記録であり, 神殿前庭部からのワニのミイラが出土した考古学的知見とよく一致する. ワニのミイラはそれを包んでいた亜麻布裂の液体シンチレーション炭素年代測定により1560±90B.P.の結果が得られた. また, ネロ神殿参道東区より出土したオストラカは, 7世紀後半から8世紀前半のもので, 宗教および交易関係の内容であることが判明した. 土製ランプの編年的研究によれば, 中部エジプトにおけるコプト教の盛行は6世紀以降である. 多量のコプト裂もその多くは7〜8世紀のものであり, この時期アコリスは再び宗教と商業の中心地として活況を呈していたことが遺物の上から明らかになった.
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