研究概要 |
I.研究成果(学術的部分) 下ビルマの性史をビルマ人とモン人との接触・同化および植民地経済の展開という2側面から捉え, 同時にこうした枠組のなかで形成されてきたした下ビルマの村落の社会・経済構造の実態を把握することが調査研究の目的であった. (1)ビルマ式社会主義の中心的地域である下ビルマにおいて, ビルマ人固有の伝統の移植とその変容過程を解明し, ビルマ人とモン人の接触過程を歴史・言語の調査から明らかにすることにより, ビルマ史およびビルマ文化の特異性を浮彫にできた. (2)村落調査に加えて地方史的視角を導入することにより, 従来の村落調査の限界を越え, ビルマ人社会の形, 展開を解明できた. (3)綿密な現地調査にもとづき下ビルマと上ビルマの社会・経済構造の相違を明らかにし, 集中的に調査と広域調査を組合わせ, 従来の研究の欠を補った. 具体的な研究成果は研究発表等および研究報告書"Historical and Cultural Studies of Burma"を参照願いたい. (4)予備調査および本調査では関係政府機関, 現地研究者, 研究機関との折衝により現地の研究状況の把握と一般調査を行なった. II.研究成果(文献調査・交流的部分) (1)高等教育局, 各大学研究所, 博物館, 農林省灌漑局, 農業公社等18ケ所の関係機関を訪問し, 時間の許す限り, 首脳陣, 研究者, 担当者と面接もしくは討論を通じて交流を深め関係者の陣容および専門分野を知ることができた. 面会したビルマ側の研究者, 関係者は250名以上に及び世代の交代の著しいビルマ人の研究者のWho's Whoが作成できるほどであった. (2)こうした交流, 討論会を通じて, ビルマ側研究者の問題意識・研究内容・最近の研究成果等を知ることができた. 同時に日本におけるビルマ研究の現状と研究成果等をも伝達することができた. 面談, 討論の機会を捉えて, 両国の研究者の交流と情報交換の必要性を訴え, 善処を要望してきた. (3)中央図書館, 国営書店, 出版社等においてビルマ語の文献, 研究書, 修士論文リストおよび英国で書かれた研究書, 統計資料などを筆写, 入手することができた. 同時に調査地に関する文献情報等を入手することができた. これら情報は渡緬しなければ入手できない資料であるが, 今後図書資料の交換などの方法で入手し日本におけるビルマ研究の一助にしたいものである. (4)以上の予備調査および本調査を通じて, 離緬前にビルマ教育省副大臣マウンディ博士と会談の折には今回, 各機関, 各地での研究交流成果を高く評価され, 種々の示唆があり, 今後ビルマと日本との本格的な学術交流の可能性が大であると確信するに至った. (5)今回の2回にわたる調査では, 変貌, 発展しつつあるビルマ社会を実見することができ, 各機関, 各地で入手した分野別の文献研究書, 情報, 知見に基づき, 英文の研究成果"Historicoa and Cultural Studies of Burma"を刊行できた. これらの研究成果の送達がビルマ側に対する当然の義務と考えている.
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