研究分担者 |
DOUGLAS L.Ka アラスカ州立大学, 水資源研究所, 教授
GERD Wendler アラスカ州立大学, 地球物理学研究所, 教授
WILLIAM Harr アラスカ州立大学, 地球物理学研究所, 教授
CARL Benson アラスカ州立大学, 地球物理学研究所, 教授
兒玉 裕二 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (70186708)
石川 信敬 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (70002277)
小林 大二 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (30001655)
KANE Douglas L Professor Institute of Northern Engineering, University of Alaska
WENDLER Gerd Professor Geophysical Institute, University of Alaska
HARRISON William Professor Geophysical Institute, University of Alaska
BENSON Carl Professor Emeritus Geophysical Institute, University of Alaska
D.L Kane アラスカ州立大学, 水資源研究所, 教授
G Wendler アラスカ州立大学, 地球物理研究所, 教授
W Harrison アラスカ州立大学, 地球物理研究所, 教授
C Benson アラスカ州立大学, 地球物理研究所, 教授
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配分額 *注記 |
8,900千円 (直接経費: 8,900千円)
1989年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1988年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
1987年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
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研究概要 |
アラスカ永久凍土地帯における融雪水、及び融氷水、降雨等の河川への流出特性を明らかにし、非凍土地帯の北海道のそれと対比して、両地帯の洪水発生機構の差異を明確にするためにこの研究を行った。永久凍土地帯では、非凍土地帯で主成分を占める地中流出が極度に小さいため、融雪、融水、降雨による河川への流出が急激かつ大量のピ-ク流出をもたらすという事が予想され、又、非凍土地帯では地中浸透のために不明瞭である積雪中の水の浸透機構が、凍土地帯では比較的容易に究明できると思われた。これらの予想を実際に観測し検証して、両地帯の流出機構を比較、解明しようと試みた。 1987年度には、研究打ち合せと夏期の永久凍土地帯の熱収支、流出機構の観測のために日本側より4名がアラスカに赴いた。フェアバンクス市郊外のグレンクリークに微気象観測装置、水位計、水温計等を設置し、約1カ月間、熱収支、融氷量、流出量、水温及び水質の変動が調査された。流出水の化学成分分析はアラスカ大学の協力を得た。熱収支観測から以下の事が解った:1)放射収支量のほぼ1/2が蒸発潜熱である,2)顕熱伝達量は極めて小さく重要でない,3)地中伝導熱は下層に凍結層が存在しているので、下向きでほぼ一定である,4)草地や溜り水面からの蒸発損失が大きく、河川水面では凝結が生じている。流出量と水質分析から以下の事が解った:1)流出量が増すと川水温が下がる,2)流出量が増すと川水の電気伝導度が増加する。2)の結果は北海道の融雪期の結果と逆になっており、凍土中の融氷が河川水量の増加に寄与している事が考えられる。 1988年度の融雪期には、アラスカ大学の実験流域であるイムナビエトクリークで融雪出水観測が行なわれた。5月に日本側より3名が赴き、微気象観測、積雪調査、河川の水質水量調査を行った。以下の知見が得られた。1)年度によって、融雪時期が大きく変化する。2)融雪期は短く、約1週間の晴天で流域の大部分の雪が消えた。北海道では融雪期が2〜3週間続く。1),2)の原因としては、融雪初期の積雪水量が約10cmと小さい事、晴天日射量が大きくて、数日の晴天で融雪熱量が供給できる事、晴天日は南風の時が多く、ブルックス山脈を越えて吹くフェーンによって気温が高くなる等が考えられた。3)融雪流出の水収支において蒸発量の割合が大きい。蒸発は積雪表面から主に起こるのではなく、消雪後、流出しないで土壌に残された融雪水からの蒸発が大きいと考えられた。4)融雪水の河川への応答は速く、約5時間でピーク流量に達した。又、流量が増加すると電気伝導度は小さくなり、水質の変化も、北海道の融雪流出の時と同じ傾向にあった。 1989年2月には、アラスカ大学のKane教授を招へいし、アラスカの永久凍土地帯における水循環について講演・討論の機会を持った。地球大気温暖化に伴う永久凍土のモデル実験が示され、所員からの反響が大きかった。 1989年4月末から6月初旬にかけて、日本側から2名が再びイムナビエトクリークに赴き、融雪熱収支の観測を行った。その結果以下のことが解った。1)融雪期において、融雪熱量の約70%は放射収支量によってまかなわれていた。2)融雪熱量のうち、30%は顕熱伝達により、5%は雪中熱伝達量であった。3)蒸発潜熱は融雪に対して負の働きを持ち、約5%であり、融雪に寄与していない。4)消雪後、アルベードの減少により放射収支量が急激に増加し、そのうちの半分は蒸発潜熱に、残りの半分は地中伝達熱として費やされた。5)以上の事から、流域の水収支の中で、蒸発量が30〜40%と大きいのは、雪面からの蒸発ではなく、消雪後の地表面からの蒸発がほとんどである事が解った。 1989年11月には、アラスカ大学よりベンソン教授を招へいし、北極アラスカの積雪機構や氷河の水収支について構演会を持った。活火山上の氷河の消衰や氷河にせきとめられた池の突発流出による洪水などの説明もあり、所員の興味を誘い活発な議論が行なわれた。
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