研究概要 |
熱帯地における感染症に対しては, ヒトを集団としてとらえた対策計画により, その制圧をはからなければならない. そのため現地における疫学資料や情報をコンピューター化する必要がある. 共同研究対象地において最大の問題となっているマラリアの疫学調査上新しい方法として現場でただちに実施できるABCーElisa法がこのたび群馬大学において開発されたので本法により, 現場において疫学調査をおこない, その結果をコンピューターによる図形化することにより対策計画を大幅に効率化させることが可能である. この研究は代表者が1980年以来, 無償援助計画に協力して調査をすすめてきたスーダン・ゲジラ地方において日英およびスーダンの三者共同により推進される計画であり, 成果は, 新しいマラリア対策のモデルとして世界保健機関(WHO)に対する助言ともなる. 実績I.熱帯地において実施可能な集団検査用マラリア血清診断法の開発, およびスーダンの現場における試行:流行地においてマラリア対策計画が進行し, 例数が減少すると, 潜伏している感染源を見出す事が困難となる. 潜伏感染者を検出するには免疫学的診断法が必要となる. 現在までに開発された方法はいずれも一定の検査室と実験設備を必要とするため, マラリアが流行している地域において実用化する上に難点がある. 群馬大学において開発されたABCーElisaによる免疫診断は結果が感染とほぼ完全に一致し, 電力, 実験機器類を一切必要とせずに実施できる点において従来開発されたさまざまな免疫診断法にまさっている. スーダンのゲジラ地方は現在マラリア対策計画が進展し, 簡便にして正確な免疫診断法が求められている. そこでわれわれは, スーダンにおいて本法により集団免疫診断を試行しその現場における実用性をしらべ, その実用性を確認した. 実績II.熱帯地における住民集団検査に適して血漿採取法:熱帯地においては, 血清もしくは血漿採取を効率的にすすめる上に, 日本では想像できない困難がともなう. 今般指先から採取された血液小滴から20ulの血液を採取し, 310ulの燐酸緩衝液をいれたエッペンドルフプラスチック遠心管に移し入れることにより, 電力や遠心器なしに血漿を採取することに成功した. 実績III.現地における免疫診断結果のコンピューター図形化:以上のように本法によればマラリアの対策をすすめている現場で, 集団血清疫学の結果をただちにだすことが可能である. だされた結果をコンピューターを使い地図上にプロットすることによっていち早く流行の先手を打った対策計画をたてることが可能となる. スーダンのゲジラ地方においては, 対象人口が200万人に及ぶので, 集計された結果を地域の広さ3段階にわけて各々図形化する計画が現場においてたてられ, その目的にかなったプログラムが進められた.
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