研究課題/領域番号 |
62045019
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 大学協力 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川島 良治 京都大学, 農学部, 教授 (50026382)
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研究分担者 |
LILY Amalia ボゴール農科大学, 畜産学部, 講師
JAJAT Jachja ボゴール農科大学, 畜産学部, 講師
熊谷 元 京都大学, 農学部, 教務補佐員 (50221940)
石田 直彦 京都大学, 農学部, 助手
矢野 秀雄 京都大学, 農学部, 助教授 (20026587)
AMALIA Lily Faculty of An-mal Science, Bogor Agricultural University
JACHJA Jajat Faculty of Animal Science, Bogor Agricultural University
JAJAT JACHJA ボゴール農科大学, 講師
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研究期間 (年度) |
1987 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
8,900千円 (直接経費: 8,900千円)
1989年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1988年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
1987年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
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キーワード | ミネラル栄養 / 血液成分 / 飼料成分 / 牛 / ジャワ島 / インドネシア |
研究概要 |
現在この地球上には11億3千万頭の牛が存在するが、その70%近くは熱帯、亜熱帯地域に位置する発展途上国で飼育されている。これらの地域で飼育されている牛は耕作のための貴重な労力源、肥料源、人々のための蛋白食料源、農民の現金収入源、またある地域では燃料源としても重要である。しかし発展途上国で飼育されている牛に比較すると、増体や子牛の生産率、1頭当たりの牛乳生産量は1/3にも満たないのが現状である。この原因として遺伝的に改良されていないことや暑熱環境、疾病などもあるが、家畜の低栄養、とくに、ミネラルの過不足は大きな要因であると考えられる。本研究は熱帯アジアの1つの例として、インドネシア国ジャワ島を選び、ボゴール農科大学の研究者とともに飼料中のミネラル含量と牛のミネラル栄養状態について調査研究を行った。 方法(1)ジャワ島東部の2地点として、丘陵部のマラン(malang)と平野部のモジョクルト(mojokerto)を選び、西部の一地点はボゴール農科大学の附属牧場のあるジョンゴル(jonggol)とした。飼料サンプルと牛の血液、肝臓サンプルは1〜2月の雨の多い時期と7〜8月の雨の比較的少ない時期の2回採取した。これらのサンプルは京都大学農学部畜産学科の研究室で分析した。分析した元素はカルシウム(Ca)、リン(P)、マグネシウム(Mg)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、セレン(Se)ならびにCuおよびSeの関連酵素であった。 結果と考察:(1)西ジャワのジョンゴルで採取した草は乾物当たり0.2%以下であり、すべての草は牛の要求量以下のP含量であった。また半数以上の血液サンプルにおいて、血液中P濃度の欠乏症状を示す値を示していた。飼料中Naは多くが0.1%以下であり、牛の要求量以下の含量であった。飼料中のP、Na含量が牛の養分要求量に対して不足しているということは中南米、アフリカ等の熱帯地域でも観察されているところであり、アジアのインドネシア、ジャワ島においても同様のことが確認された。飼料中のMgは不足値ではなかったが雨期の東ジャワにおいて限界値以下の血液中Mg濃度の牛が8〜16%存在していた。血液中Mg濃度の変化の理由ははっきりしないが有意に雨期に高くなっていた。逆に飼料中ならびに血液中Ca含量は有意に乾期に低く、雨期に高
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くなる傾向であった。 日本の草のFe含量は100ppm前後であるが、ジャワ島における3地域の飼料中の平均Fe含量は雨期と乾期でジョンゴル、2960、1020、マラン5640、2000、モジョクルト10760、3120ppmと非常に高い含量を有していた。飼料中のFe含量が1000ppm以上であれば家畜に有害とされているので、大部分の飼料はFe中毒の危険性があると考えられる。肝臓中のFe含量も400ppm以上であり、明らかにFeの過剰沈着像を示していた。飼料中のFe含量が雨期と乾期によって違いのあることは興味深い所であるが、その原因についてはさらなる研究が必要である。 一方、飼料中のCuは牛の要求量以下の含量ではなかったが、血液中のCu濃度、Cu関連酵素の血液中セルロプラスミン濃度および肝臓中Cu含量からみると、ジョンゴルのすべての牛はCu欠乏であり、東ジャワの2地点でも10〜20%の割合でCu欠乏であると判定された。Cu欠乏の主要な原因として、過剰のFe摂取が考えられた。 飼料中のZn含量は3地域とも欠乏値前後だったが、血液中Zn濃度からみると、10〜40%の割合で、これらの地域の牛はZn欠乏であると考えられた。したがって、Cuと同様にZnについても調査地域の牛の栄養状態は危険域にあると推察された。飼料中のMn含量は牛の要求量よりはるかに多い値を示しており、肝臓中に蓄積されたMn濃度は危検域以上の値であった。MnはFe程ではないにしても過剰の害が考えられた。飼料中のSe含量は我が国の飼料中の値と大差はなかったが、血液中Se濃度とその関連酵素であるGSH-Pxはかなり高い含量であった。血液中Se濃度およびGSH-Pxが高いということは熱帯地域の牛特有のものであるか、暑熱環境を含めた飼育環境によるものかは今のところ明瞭ではない。 ミネラルおよびその関連酵素以外の血液成分では、尿素態の窒素(N)濃度が正常範囲の半分以下であり、これはジャワ島の牛のN摂取量の低さを意味しているものと考えられた。Nとは逆にジャワ島の牛の血糖と血液中コレステロール濃度は正常範囲より高い値であった。暑熱環境下で動物を飼育すると甲状腺ホルモン分泌は低下することが知られているが、ジャワ島の牛の血液中サイロキシン濃度は正常範囲になっていた。この現象から長年熱帯地域で生存してきた牛は暑熱の影響をそれ程強く受けていない可能性が推察された。 隠す
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