研究課題/領域番号 |
62045020
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 大学協力 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
井上 通敏 大阪大学, 医学部・附属病院, 教授 (30028401)
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研究分担者 |
EDUARDO Marb ジョンズ. ホプキンス大学, 医学部, 准教授
MYRON.L Weis ジョンズ. ホプキンス大学, 医学部, 教授
楠岡 英雄 大阪大学, 医学部, 助手 (00112011)
MARBAN Eduardo The Johns Hopkins University School of Medicine Associate Professor
WEISFELDT Myron L. The Johns Hopkins University School of Medicare Professor
EDUARDO MARB ジョンズホプキンス大学, 医学部, 助教授
MYRON L WEIS ジョンズホプキンス大学, 医学部, 教授
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研究期間 (年度) |
1987 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
4,800千円 (直接経費: 4,800千円)
1989年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1988年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1987年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
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キーワード | 心筋の興奮収縮連関 / 摘出灌流心 / 細胞内カルシウム濃度 / 最大カルシウム活性化張力 / カルシウム感受性 / 虚血 / 再灌流 / カルシウム・オーバーロード |
研究概要 |
本研究では、生理的、あるいは病的状態にある心臓の、収縮機能に占める興奮収縮連関の役割を、摘出灌流心レべルにおいて検討した。The Johns Hopkins大学との3年間の共同研究により得られた成果は下記の通りである。 1.測定法の開発:心筋の興奮収縮連関における要素のうち、細胞内Ca^<2+>イオン濃度(〔Ca^<2+>〕_i)と、最大Ca^<2+>活性化張力の2つについて、摘出灌流心標本における測定法を開発した。 (1)灌流心標本における〔Ca^<2+>〕_iの測定:Ca^<2+>と結合する試薬5F-BAPTAと弗素核磁気共鳴法(F-NMR)を組み合わせた方法を確立した。さらに、この方法を心臓ペーシングによるゲート法と組み合わせることにより、心周期内の〔Ca^<2+>〕_iの変動(Ca transient)の測定を可能とした。 (2)灌流心における最大Ca^<2+>活性化張力の指標の測定:植物性アルカロイドryanodineにて感作した心筋を高頻度で電気刺激すると、定常的な収縮である強縮が作製できる。この強縮時の左室発生圧、すなわち、最大Ca^<2+>活性化圧(Maximal Ca^<2+>-activated Pressure:MCAP)は最大Ca^<2+>活性化張力の指標であることが明らかにされているので、これを用いた。 以上の方法を組み合わせることにより、張力発生を決定づける興奮収縮連関の3要素、すなわち、Ca transient、収縮蛋白のCa^<2+>感受性と最大Ca^<2+>活性化張力を、摘出灌流心において評価することが可能となった。 2.虚血による心収縮性低下の機序の検討:虚血に伴い変化すると考えられる心筋内代謝産物が、MCAPに及ぼす影響について検討した。無機燐酸と水素イオンの収縮蛋白に対する影響として、両者ともMCAPを低下させるが、水素イオンはさらに、収縮蛋白のCa^<2+>感受性をも低下させることが明らかになった。無機燐酸・水素イオンは共に虚血時に増加することが知られており、それぞれがMCAP/Ca^<2+>感受性を減少させることが虚血時の収縮性低下の一因であると示唆された。 3.Stunned Myocardiumの病態生理の解明:心筋は、短時間の虚血後、直ちに再灌流すると、細胞壊死は生じないにもかかわらず、その収縮機能の低下が遷延することが知られている。この病態はstunned myocardiumと呼ばれており、臨床的にも重要な問題となっている。しかし、虚血は、心筋と冠循環系が同時に存在する摘出灌流心のレベル以上の系でないと模擬できず、これまでの興奮収縮連関の解析法は適用できない。そこで、本研究で開発した手法を用い、興奮収縮連関の3要素を虚血・再灌流心にて評価した。その結果、stunned myocardiumにおける収縮機能の低下は、収縮蛋白の最大Ca^<2+>活性化張力の低下によりもたらされていることが明らかとなった。さらに、5F-BAPTAとF-NMRの組合せによる観測から、stunned myocardiumにおいては、Ca transientは虚血前よりむしろ増加しており、収縮性低下の原因とはなり得ないことが判明した。すなわち、stunned myocardiumにおける収縮性の低下は、収縮蛋白それ自体の特性変化、すなわち、最大Ca^<2+>活性化張力の低下とCa^<2+>感受性の減少による事が明らかとなった。 4.Stunned Myocardiumの発生機序の解明:stunned myocardiumの発生には、虚血・再灌流に伴う一過性の細胞内カルシウムのオーバーロードが関与することを明らかにし、さらに、このカルシウム・オーバーロードの存在を、F-NMRを用いた手法により直接的に証明し得た。 5.非虚血性の細胞内カルシウム・オーバーロードが収縮性にもたらす影響の検討:虚血とは関係しない細胞内カルシウムのオーバーロードと収縮機能との関係を、アドリアマイシンの急性毒性において検討した。その結果、アドリアマイシンは、虚血とは全く異なった機序により細胞内カルシウム・オーバーロードを引き起こし、収縮機能の障害をもたらすことが明らかとなった。このことより、細胞内の一過性のカルシウム・オーバーロードが、収縮機能の低下の機序として重要であることが明らかにされた。
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