研究課題/領域番号 |
62045033
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 大学協力 |
研究機関 | 東京女子医科大学看護短期大学 (1987, 1989) 東京女子医科大学 (1988) |
研究代表者 |
河合 千恵子 東京女子医科大学看護短期大学, 看護学科, 教授 (80091114)
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研究分担者 |
HAROLD Rowe ハワイロア大学, 看護学科, 教授
HESSEL Flitt ハワイロア大学, 看護学科, 教授
川野 雅資 東京女子医科大学看護短期大学, 看護学科, 助教授 (80169747)
中重 喜代子 東京女子医科大学看護短期大学, 看護学科, 教授 (70091113)
長谷川 浩 東京女子医科大学看護短期大学, 看護学科・主事, 教授 (70091105)
ROWE Harold Professor Hawaii Loa College
FLITTER Hessel Professor Hawaii Loa College
H ロウ ハワイロア大学, 教授
H フリッター ハワイロア大学, 教授
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研究期間 (年度) |
1987 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
8,400千円 (直接経費: 8,400千円)
1989年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1988年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
1987年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
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キーワード | ホスピスケア(hospice care) / 緩和ケア(palliative care) / 支援ケア(supportive care) / 死別ケア(bereavement care) / インフォームドコンセント(informed consent) / ボランティア(volunteer) / クオリティオブライフ(quality of life) / 在宅ケア(home care) |
研究概要 |
この研究の目的は、主に日米両国における末期と死別に関する看護ケアの現状を調査し、それぞれの問題点を比較しながら、わが国の社会文化に適した末期看護ケアのあり方を探究することにある。そこで、本学と教育研究の交流関係を締結しているハワイロア大学看護学科H.フリッター博士の協力を得て、医療機関及び医療従事者に対する質問紙調査、各種医療機関の訪問および医療スタッフとの討議、遺族の看病と死別体験の調査、看護ケアの実地研修などを実施した。その研究結果の概要と今後への展望を述べると、以下の通りである。 1 末期ケア特にホスピスケアの実践の歴史および現状については、両国の違いが大きい。米国では既に1960年代末にソンダース博士(英国)のホスピス運動をモデルとした末期ケアが開始されているが、わが国のホスピス実践はせいぜい10年以内の歴史に留まり、近年社会的な関心の的になってきた。わが国のホスピスケアは少数の医療者の熱意に支えられていわば試行的に行われているのに対して、米国のそれは医療制度の一環に組み込まれて日常的に機能している。 2 われわれの調査では、1987年時に米国のホスピスプログラムは約1,600あり、日本のそれは13程度であった。現在は米国1,800に対して、日本20ほどと推定される。また、米国には非営利団体「全米ホスピス協会」および「州ホスピス協会」があり、ホスピスケアの理念と定義そして25項目のケア基準が定められており、ケア水準の向上への努力が払われている。今後わが国でも、ホスピスケアの公的認知と基準が必要になろう。 3 米国のホスピスケアは、在宅ケアと入院ケアの継続性が強調され、在宅ケアに主眼がおかれている。日本のホスピスの大部分は入院ケアが中心であり、在宅ケアの実践には医療制度的、医療技術的、社会文化的制約が大きい。 4 米国のホスピスケアは、緩和ケア、支援ケア、死別ケアの3本の柱から成っている。日本では、緩和ケアに重点がおかれ、最近支援ケアが注目され始めたが、死別ケアについては今後の課題とみられている。 5 米国のホスピスケアは、患者および家族によるケア選択を基にして、医師や看護婦、MSW、OT、PT、ST、栄養士、心理学者など各種専門家、ボランティア、家族、患者の協力体制のもとに実践される。日本では主として医師と看護婦が医療の主導的役割を担っていて、患者と家族は受身の立場におかれやすい。ホスピスボランティアの導入は、わが国の今後の課題のひとつである。 6 医療従事者に対するわれわれの意識調査の結果によれば、次の諸問題に関して米国のスタッフは全面的に肯定しているが、わが国のスタッフはあまり積極的ではないことがわかった。即ち、患者に病名(癌)や予後をはっきりと説明すること、末期患者の在宅ケアを実践すること、看護婦やMSWがホスピスのディレクターになること、ボランティアにケアを委ねること、死別への援助をホスピスの基本業務に組み入れること…など。日本の医療者には、末期の状態の患者を家に置くことは非常に危険であるとか、家族が不安のあまり在宅を求めないだろうとする意見が強く、患者に病名を告げないほうがよいとする意見、病名を知りたくないというのも患者の権利だと見る意見などがあり、現在の米国の医療者の見解とは逆の傾向があった。 7 癌により家族を亡くした遺族に対するわれわれの意識調査によっても、患者に病名を知られたくなかったとする意見が多く、しかも患者に嘘をついていることからくるストレスを強く感じていた。病気の真相を知らせないほうがよい、周囲の状況から何となく察知するようになる、知りたくないという患者や家族の気持ちを尊重するという考え方は、非常に日本的な文化に根ざすものであり、いかなる状況を「クオリティ・オブ・ライフ」と見るか、今後の課題である。 8 遺族の調査では、医療者(特に看護婦)のケアは、身体面の働き掛けが重点になっていて、心理・社会的な面とか宗教的(信仰的)な面での支援は、必ずしも十分ではないことがわかった。予後不良の末期患者およびその家族は、治癒の約束された患者や家族以上に心理・社会的・宗教的ニ-ズが高い。死別への援助を含めて、この面の改善が痛感された。 9 米国の実践の中から何を取り入れ、日本の文化にふさわしい形にどう改善すればよいか、今後の継続的課題として取り組んで行きたい。
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