研究概要 |
1.FeーCr 合金のプロトン照射による照射誘起偏析に関する研究においては5〜29Crの5種類の濃度の合金について, メスバウアー分光法により母相のクロム量の変化を調べた. 照射温度に相当する温度で2相分離を生ずると見なせる濃度の合金にはクロムの減少が見られ, 固溶体領域にある合金にはクロムの増加が見られる. 従ってプロトン照射は2相分離を促進する効果がある. 分析電子顕微鏡観察によると転位ループにクロムの濃化が見られる. 照射により注入された水素が2相分離の促進にどの程度寄与しているかはヘリウム照射を試みることにより明らかにされるであろう. 2.昨年度に実施した標準小型パンチ試験片より更に小形のφ3TEMデイスク試料を用い, 高温高圧水中の耐蝕性評価を電気化学的方法により側定することに成功した. 又一連の鉄一クロム合金の耐蝕性を250℃の高温・高圧水中で側定し, クロム濃度の減少とともに耐蝕性が劣化すること, JVMS試料では500℃の時効により耐蝕性が著しく低下することを見出した. 次年度には更に高温・高圧水中での試験が可能になるように部品の改良を試みる. 3.小形パンチ試験治具を用い, 高温・高圧水中における応力腐食感受性試験法を開発した. 小形パンチ試験の圧子球として窒化珪素を用いることにより, 250℃においても有意な結果が得られることを確認した. この方法の特長はSSRT法より3桁以上速い歪速度で試験が可能であること, 溶液のポテンシャルに相当する電圧を試料に負荷しての側定が可能であることなどであり, 被照料微小試験片による応力腐食感受性試験法として極めて優れた試験法であることが明らかにされた. 治具を工夫すれば, この方法はTEMディスク試料にも適用が可能であると見られる.
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