研究概要 |
Zr系合金ゲッターは, 回収,貯蔵,供給を初めとする様々なトリチウムプロセシングの安全性確立のために極めて有用である. 本研究ではZrーNi合金を主体にして, その活性化過程および水素同位体の吸蔵ー脱離過程を調べ, 増殖トリチウムの回収ー貯蔵ー精製ー供給材としての性能を評価した. Zrに他の金属元素を添加することにより, 水素吸蔵作用を発現させるための真空加熱温度(活性化温度)が低下する. ZrーNi合金では約650℃とZrよりは250℃ほど低い値を示した. 但し, ZrーVーFe合金に比ベれば250℃ほど高い. この活性化は当初表面に存在した炭素,酸素等の不純物が消失することによるが, その温度は合金中での酸素および炭素の拡散の容易さと酸化物及び炭化物の安定性とのバランスで決まるものと考えられる. 水素同位体の吸蔵に対しては, Niの添加量が増すにつれて吸蔵の活性化エネルギーが低下する傾向が認められた. 例えば, , 水素に対して, 33%Niでは0.63KCal/molとZrでの値の約1/4となり, 合金化を適切に行うことにより, 吸蔵速度を増大させ得ることが知られた. 他方, 吸蔵熱については, 上記のような単純な相関はなく, 添加するNiの量により吸蔵熱が増える場合と減少する場合が認められた. 例えば, 20%Ni合金では, 他の場合と異なり, 合金化により吸蔵熱が減少した. また, ZrにNiを添加することにより, 酸素系の不純物気体に対する抵抗力が高まり, かつ水蒸気吸蔵に対しても高い活性を示すことが知られた. 従って, この系のゲッターはトリチウム水蒸気からのトリチウム回収に有効である. 更に, 吸蔵過程で比較的大きな同位体効果を示すので, 同位体分離にも有用であることが知られた. 今後この種のデータを蓄積し合金化効果の原因を解明することにより, 使用条件の異なる様々なトリチウムプロセシングでの最適のデッターを設計するための指針を得ることが出来る.
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