研究概要 |
磁場閉込め方式の核融合の次期装置においては, 大型超伝導マグネットが強く要求されている. 従来, 大型マグネットを安定に動作させる方策として冷却安定化法が採用されている. この方法は信頼性は高いが動作電流密度が30A/mm^2程度の小さな値になるという欠点をもつ. 本研究の目的は, 安定化材である銅の低温における特性, 高い熱伝導度ときわめて小さい磁気拡散係数を有効に利用した新しい安定化方法「動的冷却安定化法」の理論の定式化を行い, それによる予測をモデル導体を用いて実証することにある. この方法によればNb_3Snテープ導体による大型コイルにおいて, 動作電流密度を100A/mm^2まで上げられることが可能となると予想される. 1理論解析 考察の対象とする導体は巾広のテープ導体で, ここでは超伝導体として厚さd=25ー90μmのNb_3Snをとりあげた. これを厚さがD/2mmの銅のテープで両側よりサンドウィッチした複合導体を考える. 巾広面が液体ヘリウムで冷却される条件のもとで, 外部加熱やパルス的変動磁場を加えた場合の安定限界電流密度Jsを解析より求めた. Jsは超伝導体及び銅の物性値, ヘリウムの伝熱係数できまるが, 銅の厚さDとともに増加するのが特徴である. 2予備的実験と理論の比較 素材としてのCuーNb_3SnーCuテープはd=25μm,D=0.1mmを用いた. この導体は磁気的に不安定であった. つぎにこの導体の両側に銅テープ(D=2mm)を付加すると磁気不安定性は解消する. 解析によると, 前者ではJs=1.1×10^4A/mm^2,後者ではJs_2=4.8×10^4A/mm^2で, 他方現実の臨界電流密度Jcとすると, Js_1〈Jc〈Js_2の関係があって, 観測事実を説明できる. なおこの安定化法は先進材料, 酸化物にも將未適用されるであろう.
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