研究課題
特別推進研究
日本絵画史研究の最大の問題点は、研究対象となる実作品の欠如により研究の範囲が狭められることと、残された現存作品に偽物が混入してしまっていることによって研究成果が不正確、不確実になることであった。本研究では、戦災や海外流出で失われた作品に関しても、作品入札時の図録などに掲載された写真資料約25万点を研究することによって補い、今まで知られていなかった日本絵画史の全体像を把握することに努めた。又、作品の真偽を判定するために落款印章照合分析研究を進め、作品の真偽が客観的に判定できる研究方法を確立した。又、この研究方法により印章の摩耗や、落款の筆跡の変化を分類することによって年紀のない作品においても制作年を解明することが可能になった。更に落款印章を伴わない作品に関しては作品に使用された筆の種類や筆致、技法筆を解析することにより作者判定、流派判定が行える方法を確立した。又、絵画史研究の精度を高め、日本文化史研究の基盤となる成果を得るために、単に作品研究を行うだけでなく、作品制作時の社会の状況、文化、思想、交通、経済等に至るまで幅広く調査を進め、画家を取り囲む当時の時代的、社会的背景を明確にするこにより、作品制作における画家の絵画思想に関しても深く考察を進めることができた。個人作家としては、円山応挙、与謝蕪村、雪舟等楊等について解明が進み、順次成果を発表予定である。
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