研究概要 |
この研究のねらいは, 主として珪酸塩系での結晶の核形成, 成長および溶解機構を理解し, これを通じてマグマの発生, 火成岩の形成など地質学的な現象の基本に貢献しようとするところにある. このため, 光学顕微鏡の裁物台上に放置した加熱炉中に珪酸塩液体の薄膜をつくり, そこに任意の過冷却度を与えて結晶の核形成, 成長あるいは溶解を起させ, その過程をin-situで透過光によって観察, ビデオで記録するというユニークなその場観察法を開発した. この方法では視度をいちじるしく高めることと, 條件を厳密に制御することに最も力を注ぎ, ナノメーターオーダーの厚さの成長前の挙動や, 成長中の結晶のまわりのものの動きを直接みることができ, また温度制御は1600°Cで±0.5°Cの高さである. したがって, 良く制御された條件下で種々の速度論的研究を行なうことができる. また, 本年度購入の走査型電子顕微鏡により, その場観察した試料の急冷産物について相の同定, 詳しいモルフォロジー観察が可能である. 上記の手法により, 本年度はF_0-An-SiO_2系, An-Di系, MgAl_2O_4-Ca_2SiO_4(Cr)系, スピネル系, Ak-Ge系などの珪酸塩系について, (1)準安定相の核形成, (2)成長パラメーターとの関連におけるモルフォロジーの変化, (3)固, 液界面のぬれ角測定, (4)多形の安定領域(5)酸素フユガシティーの影響, (6)セクター構造の形成および溶解, などの問題についてその場観察を行なった. その結果, いろいろなことが明らかになったが, 特筆に価するのは準安定核形成が極めて普遍的な現象で, その理由は界面自由エネルギーと駆動力との競合にあることが明らかになり, またGe-Ak系固溶体では, セクター構造が実験的につくりあげられ, 溶解現象もセクターごとの組成および完全性の差異を反映した形で進行することなどである. なお, 62年12月7日, 仙台市で班会議を開催した.
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