研究概要 |
機械処理を支える言語理論は, 形式化されたものであることを要する. 一方また, 現状では形式化を見るに至らなくても, 機械処理の高度化を目指す先行的研究も要る. かかる目標を設定してこの研究を行った. 1.意味記述体系の構築 NBGクラス論理を背景とする意味記述体系の確立,目指し, 指示詞や事柄体化表現の釈義法, 比較級的な相的表現と原級との及び連用修飾表現を追加した場合のそれぞれの意味的関連, 架空的事物に言及する表現の安全な意味記述法について, 考究した. 2.文章の機械的生成 対象を記述する目的の文章であるレポート・論文のたぐいにつき, 意図・意味・段落が構造的にしっかりしたものを分析し, その骨組みを抽出した. これに立って, 説明的報告文の作成を支援し文章を生成するシステムとそのデータベースとを試作した. 3.日本語のGPSG 日本語句構造文法理論の形式化を, 単一化という概念を中心に整えることで, 機械化への基礎を提供することに努めた. 特に, 附加構造, 中でも数量詞の扱いに重点を置いて, 構文論的・意味論的記述を検討した. 4.日本語を中心とするモンターギュー意味論的研究 過去数年の形式意味論の成果を検討・整理し, かかる基盤に立って, 名詞句の解釈の定式化について考察した. 英語などに見る「限定詞型」言語に対し, 日本語名詞句の基本的特質が「ハダカ名詞」及び助数詞構造に見られることが明らかになった. 5.文脈構造に立つ言語理解 日常言語の理解は, 文脈的意味を汲み取りつつ理解を創造してゆくダイナミックな情報処理として特徴づけられる. 言語的文脈と言語外文脈との関係, 文脈の前提となる諸要因, 推論による合意, メタファーの解釈について考察した.
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