研究概要 |
μ中間子の関与する原子過程は, 原子衝突問題の中でも特殊で学問的にも興味深いとともに応用上も重要である. 他の原子過程と比べて際立った特徴は, μ中間子が原子核より軽く, 電子より重い中間的な質量をもつことと, 有限寿命を持つことに由来する. これまでμ中間子を含む原子過程についてボルン近似(BA), 歪曲波近似, アイコナル近似(EA), 古典軌道モンテカルロ法(CTMC)で計算を行ない理論の妥当性について検討を行った. 本年はμ^++(μP)→(μ^+μ^-)+Pの過程について励起状態を含む場合についてBA, EAでの計算を中国科学技術大学のグループと共同で行った. またCTMCの計算をμ中間子を含むクーロン3体系について組替過程, Break-up過程について行った. 超球座標による断熱基底展開法がクーロン三体問題で有望視されているが, これまで原子の問題に応用されているのみである. これは従来の方法が分子のような二中心問題では収束性が悪いからである. そこで超楕円体座標を用いた試行関数を作り, 変文法で(dtμ)系の超動径に関する断熱基底, 及び断熱エネルギー曲線を初めて求めた. 3状態近似で求めた角運動量J=Oの束縛状態のエネルギーは-318.72eV(V=O), 及び-34.36eV(V=L)である. これらの最も精度のもい計算値(数百項以上の変分計算)は-319.14eV, -34.83eVである. 少数の基底でこのような精度を得たことはここで求めたエネルギー曲線と相互作用ポテンシャルが(dtμ)系の理解に有用であることを示している. 現在この結果を使って(dμ)+tの弾性散乱, 及び(dμ)+t→(tμ)+dの断面積の計算が振興中で, 相対運動エネルギー-10^<-3>eVで弾性散乱断面積が2.15×10^<20>cm^2, ミューオン移行断面積が9.24×10^<-20>cm^2の値を得ている.
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