研究概要 |
多くの生理活性物質はこれらを特異的に結合する受容体を介して作用するが, 近年化学物質を媒介とする生体情報伝達の機序がようやく分子レベルで解明されうる状況となった. 本研究では多くの受容体の中から研究の射程内にあるものを主たる対象とし, これを合成化学, 生物化学および医学の各専門分野から化学受容の本質を理解する上での重要な問題を提起し, それぞれの立場からの多面的研究を推進している. 同時に班員相互の密接な連携と研究協力を通じ学際的な本課題の成果をあげることを意図している. 本年度の研究実績の概要は以下の通りである. 1.電気ウナギナトリウムチャンネルの代表的毒素テトロドトキシン結合部位を同定するため, その化学修飾に使用する特異的リガンドを引続き合成した. これらを用いて, チャンネル分子中のトキシン結合部位を決定すべく検討を進めている(金岡). チャンネルタンパクの糖結合部位の解明と糖鎖構造の解析を行う上で不可欠なペプチドの微量精製法及び糖ペプチドの特異的分離法に検討, 改良を加えつつある(崎山). 2.生体情報伝達の最も基本的過程である分子識別の機作解明を目指し, 機能性シクロファン類の合成と性質の解析を引続き行っている(古賀). またチャンネル, レセプター機能をもつモデル物質を開発するために, 電子の選択的膜透過機能をもつπ-電子系脂質を合成し, その性質を検討しつつある(小夫家). 3.受容体機能の制御として重要な, 受容体および関連タンパク質の異化代謝を, 分解酵素カルバインとその阻害物質カルパスタチンの相互作用の観点から,主に生化学的・遺伝子工学的に検討し, 構造上の新知見を得, カルパインの関与するヘテロカスケードに注目している(村地).
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