研究概要 |
本研究で本年度に得られた成果の概要を以下に記す. まずPaecilotoxinアナログの探索では前年度その存在を示摘したE.Fの微量成分がLajos RadicsらによりP.marquandiiの培養液中より単離されその構造が明らかにされた. この2成分を加え6種のPaecilotoxin類が得られたことになった. Paecilotoxinの特徴的2つの生物活性である脱共役活性および日和見感染の原因物質としての役割について合成フラグメントペプチドを用いて検討した. R-Aib-Leu-Leu-Aib-Aib-β・Ala-DPDのシリーズでは先ずその脱共役活性はN末端に結合させた脂肪酸が活性に深く関与することが判明し, 合成品の中では, Palmitic acidの結合物質が最強の作用を示した. 一方N末端フリーの物質では全く活性が認められず, 脱共役活性には両親媒性構造が必要であるとの結論を得た. 一方本シリーズのペプチドの細胞性, 液性免疫に対する作用もfootpad swellingおよび脾臓でのプラーク形成細胞を指標に検討したが, ペプチド類はいずれに対しても有意な活性を示すには至らなかった. さらに次の合成ペプチドR-Thr(OBzl)-Aib-Leu-Leu-Aib-Aib-β-Ala-OBzl〔R=BOC(1), BOC-Leu(2)〕についても脱共役活性を前記ペプチド類と同様ラット肝ミトコンドリアのstate4呼吸において検討した. その結果両ペプチドの活性は非常に強く, 特に(2)ではED50が0.09μMとPaecilotoxinAの0.6μMより低い濃度で作用を発現させており非常に興味深い. またこれらペプチド類の脱共役作用はPaecilotoxin同様リン酸基の存在に依存しないことより, 本作用はミトコンドリア膜の状態には依存しないものであることも判明した. 今後さらに種々のペプチド類を合成し, Paecilotoxinの構造-活性相関性の研究を完成させたい.
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