研究概要 |
光学活性な物質の化学合成法の新しい方法論が求められている状況で, 本研究ではカンファー誘導体をキラルテンプレートとする新合成法を開発した. これは不斉源としてこれまで糖質を用いていたものに加え, テルペノイド誘導体が有効であることを示したものである. 中核的な反応は, 既に報告書が開発してきたヘテロ共役付加反応で, これの金属キレートによる鎖状立体制御合成の原理を利用した方法論である. 新鮮な点は次の3通りである. 1)ヘテロオレフィンの合成法は, これまでと異りアセチレン化合物から出発してこれにヒドロシリル化するルートを採った. これは塩化白金酸触媒をわずか0.001当量用いるだけで高収率で生成物が得られる良好な反応である. また有機ケイ素団としてこれまでトリメチルシリル基を使っていたものを, トリエチルシリル基とすることで, より立体的にかさ高いヘテロオレフィンとした. プロパルギルアルコールから5段階でカンファーヘミチオアセタールのヘテロオレフィンが合成できた. 2)ヘテロ共役付加反応を上記ヘテロオレフィンに試したところ, メチルリチウムは99%と高い選択性を示すにもかかわらず, ブチルリチウムは77%と低い結果を与えた. 従来の経験では, 反応溶媒を低極性とすれば高選択性が得られたが, このヘミチオアセタール型では更に臭化リチウムのエーテル飽和溶液の添加で99%の純度に向上した. アルキルリチウムのみならずグリニアル試薬でも塩の添加効果は認められ, 高い反応速度での付加が観察された. 3)共役付加のあとは, スルホニル基の存在を利用して炭素鎖延長(プレニル化)し, アマルガム還元後アルデヒドへ加水分解することにより, ノルシトロネラールを合成した. 以上のように, カンファーを用いるキラルヘテロオレフィンの新合成法, 共役付加, 応用で高選択的合成をした.
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