研究概要 |
この研究班では, 各種の物質集積体を各班員自からの設計にもとづいて合成し, 各種分子の認識, 識別機能と, その集積状態を検討し, 生体細胞における検知伝達系の機構解明に役立つ作業仮説を提案するとゝもに, すぐれた人工の分子識別系の構築を行おうとしている. 四本の長さの等しいポリエーテル側鎖を有する金属ポリフィリンは, 水溶液中でface to faceのスタッキングを形成し, その安定性は, 鎖の親水性と環の疏水性のバランスに支配されていることが明らかとなった. (井上) 新合成法が開発されたシクロファン系化合物では, [2.2.2]及び[2.2.2.2]メタシクロファン類が合成され, それに対する官能基導入が検討された. なお合成中間体であるt-ブチル置換体は, 1/2〜1/6モルのクロロホルム, ベンセンを取り込むが, X線解析により分子内の空孔に包接されたのではなく, 2ヶのt-ブチル基によって挟まれた形であることが判明した. (田代) レゾルシンーアルデヒド四量体環状オリゴマーを脂溶性の極性ホストとする極性基質の取り込みに関しては, リポースとグルコースに大きな差異が観察され, 今後糖質の選択膜輸送への発展が期待される. (青山) 二本鎖を有するジアミン配位子を有するニッケル錯体による糖質の交換反応では, アルキル鎖長によって骨格転位を伴うC-2エピマー間の平衡点を変えうること, 金属をカルシウムに変えると骨格変化を伴わないケトースへの異性化が促進されることが見出された. (吉川) DNAフラグメンドの分離が, 平たい縮合環3ヶを有する化合物を用いアフィニティークロマト的な分離や電気泳動を用いて行われた. DNA塩基対間に特異的にインターカレートする化合物を用いるこの種の分離法は更に発展することが期待される. (高木)
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