研究分担者 |
近藤 寿人 京都大学, 理学部, 助教授 (70127083)
堀 雅明 放射線医学研究所, 遺伝研究部, 室長
堀田 凱樹 東京大学, 理学部, 教授 (30010036)
岡田 益吉 筑波大学, 生物科学系, 教授 (60015534)
高木 信夫 北海道大学, 遺伝子実験施設, 助教授 (20001852)
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研究概要 |
真核細胞生物における遺伝的制御系の応答を解明するためには, 染色体の広領域を同時に制御する機構と, 個々の遺伝子をそれぞれ単独に制御する機構の本質を正確に把握し, それぞれの制御様式の持つ意義を理解しなければならない. 本研究はその目的のために開始されたが, 本年度においては, 以下の特記すべき新知見を得た. (1)哺乳動物の雌の体細胞中の二つのX染色体のうち, 片方は常に不活性化されている. ところが, 雌マウス胸腺細胞とテラトカルシノヌ由来ECC細胞を融合させ雑種細胞を作ると, 4回ないし5回の分裂の後に不活X染色体は再活性化されること, しかし雌ラット胸腺細胞とECCの雑種細胞では不活性X染色体は同じように一旦活性化するが, 再び不活性Xが出現する場合もあることが明らかとなった. この知見は不活化機構解明の有力な手がかりとして期待できる(高木). (2)ショウジョウバエ唾腺巨大染色体では, 遺伝子発現に伴って特異的パフ構造が形成される. 体外に取り出した唾腺染色体に細胞内因子を加えて特異的パフ形成を誘導できる系が開発できた. この系に更に改良を加え, 遺伝子発現を誘導する細胞内因子を形態学的方法でアッセイできるようになることが期待できる(岡田). (3)ショウジョウバエの遺伝子act88Fは, 間接飛翔筋のみで発現されるアクチン遺伝子である. この遺伝子の突然変異のうちあるものは, 飛翔不能とともに, 熱ショック蛋白の合成をひきおこす. P因子形質転換法を利用した解析により, 熱ショック蛋白遺伝子発現は, アクチンの異常そのものが直接的にひきおこすことが明らかとなった. 熱ショック遺伝子発現をひきおこす変異とおこさない変異の比較解析により, アクチン変異と熱ショック蛋白遺伝子発現の関連のメカニズム解析が進行中である(堀田).
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