研究概要 |
62年度において, 作成した傷害誘導ACC合成酵素の抗体を用い, 今関はカボチャの傷害誘導ACC合成酵素の全鎖長cDNAをクローン化することに成功した. また, オーキシン誘導酵素と傷害誘導酵素は免疫化学的に異なることを明らかにしてオーキシンと傷害による選択的遺伝子発現解析の基盤を作った. オーキシンの核内転写の制御に関して, 酒井はヤエナリ単離核がオーキシン結合蛋白質とIAAの存在下で特有のmRNAを合成することを明らかにするとともに, オーキシン結合蛋白質と結合する核質内蛋白質がRNAポリメラーゼ活性を持つことを示しオーキシン作用を分子レベルで解析する上で重要な知見を得た. 渡辺は, ハツカダイコン緑葉の老化と関係する数種のcDNAクローンの遺伝子発現を調べ, cDNAクローン1が最も密接に老化と関係することを明らかにし, その形質発現は光合成電子伝達阻害剤で誘起され, 光合成電子伝達系の機能低下と老化との関係を示唆する結果を得た. 細胞生長の制御機構に関しては神阪が, 細胞壁の架橋構造と関係するジフェルラ酸が特定の多糖画分に局在し, 細胞加齢とともに増加することを明らかにした. 近藤はアブシジン酸の気孔閉口作用を解析するため, 細胞膜を抗原とした単クローン抗体を作成し, その孔辺細胞プロトプラストとの反応性を調べ, 強く結合する一つの単クローン抗体を得た. 活性型ジベレリンの生合成に関して, 神谷はジベレリンの活性発現に重要な3β水酸化を触媒する酵素をインゲン未熟種子から精製し, 本酵素は反応に二価鉄と2ケトグルタル酸を必要とする酸素添加酵素で, GA20からGA1への水酸化のほかGA5からGA6へのエボキシ化反応も触媒すること, 植物種によって異なる性質の酵素であることなど重要な成果を得た. 横田はブラシノステロイドの代謝物を化学的に調べブラシノライドの6炭糖配糖体を同定した. 糖の種類, 結合位置は追求中である.
|