研究分担者 |
彦坂 興秀 東邦大学, 医学部, 助教授 (70120300)
真野 範一 東京都神経科学総合研究所, 神経生理部門, 副参事 (40073077)
丹治 順 東北大学, 医学部, 教授 (10001885)
有働 正夫 大阪大学, 健康体育部, 教授 (60009983)
佐々木 和夫 京都大学, 医学部, 教授 (20025539)
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研究概要 |
本研究の主たる目的は可塑性神経回路の動作原理が最も端的に現われる運動制御を例にとり, 運動学習の成立を含めて高次神経系にみられる適応的可塑性の原理を解明し, そしてそれを確立することにある. 森は多彩な運動動作の背景を構成する要素の一つ, とくに筋トーヌスの調節機構の中でも抑制系をネコで解明しようと試み, 脳幹から脊髄アルファ運動細胞に至る実行系を解明することに成功した. 有働はネコを用いて黒質網様部ニューロンの出力は, ネコの歩行時の頚および体幹が向く方向を制御していることを明らかにし, その実行系について実験仮説を提出した. 佐々木はサルの視覚始動性運動の学習そしてその遂行には大脳皮質連合野と運動前野-橋核-新小脳-視床-運動野を結ぶ神経回路が関与していることを明らかにし, さらに前頭連合野の機能を解析している. 丹治は大脳補足野は, サルが内的情報をもとにして順次動作を続けていく過程で重要な役割を果すと推論した. 真野は小脳プルキンエ細胞の単純スパイクは手の随意運動の方向に関係なく発射頻度が増大することから, 発射頻度の変化は上位中枢からの運動司令に基づくものと推論した. 彦坂は急速眼球運動の発現に対する尾状核の関与を解析し, 尾状核ニューロンは要素的運動のsequential chainからなる学習運動において個々の要素的事象の予測的活動に参加していることを明らかにした. 本研究の重要な研究成果を上記したが, 脳の適応的可塑性を解明しようとする研究の中で, 運動制御の位置づけはその比重を増大しているのが世界的傾向の一つである. 昭和62年度には合同班会議, 班会議, シンポジウム等で研究成果は公開され討議された. 昭和63年度は計画研究の最終年度でもあるので, 高次神経系のみられる適応的可塑性の原理が一つでも解明されるよう研究目標に対して一層の努力をしたい.
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