研究概要 |
中枢神経系で一定の投射経路が成立するとき, あるニューロンは, その軸索を遠く離れたところにある標的細胞に向かって伸ばすのだろうか, それとも標的細胞は発生の初期にはニューロンの近傍にありそのときに両者の結合が成立し, その後の発生により両者が離れていくのだろうか? このことを明らかにするため, ニワトリ胚の神経原基の微小部分をウズラ胚のそれで置換し, このキメラ胚において, 移植神経原基の発生を追跡しようと計画した. この目的のため, ウズラ細胞の, 突起をもふくむ細胞質や細胞膜と特異的に結合できる抗体を作製した. 1.ウズラ細胞特異的ニワトリ抗血清: 7日ウズラ胚のホモジェネートから細胞膜の粗分画を得, これでニワトリを感作する. 25日間隔で2回感作し, その後5日目に採血, 血清を得る. ニワトリ胚組織で吸収したのち, ビオチン化-抗ニワトリ抗体を用いた間接免疫組織化学により, ニワトリ胚, ウズラ胚, およびニワトリーウズラ キメラ胚のパラフィン切片上のウズラ細胞を検出する. ニワトリ胚はほとんど染まらないのに対して, ウズラ胚では神経系を含むすべての組織が染色された. キメラ胚では, ウズラ体節由来の細胞が染め出された. これは, その核小体の形態からも確認された. しかし, 8日胚以前のウズラ胚には, この抗体は結合しなかった. 2.ウズラ細胞特異的マウスモノクローナル抗体: 1.と同じ抗原を用いてBalb/Cマウスを感作し, その脾細胞を用いてハイブリドーマを得, ニワトリ胚とウズラ胚のパラフィン切片を用いてウズラ細胞特異的モノクローナル抗体を産生するクローンを得た. この抗体は, 脊髄の前索を上行する神経線維と結合する. この抗体も8日以前の胚とは結合しない. 今後, より若いウズラ胚組織と結合する抗体を得る必要がある.
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