研究分担者 |
福島 邦彦 日本放送協会, 放送技術研究所, 主任研究員
伊藤 和夫 京都大学, 医学部, 助教授 (60093184)
岩村 吉晃 東邦大学, 医学部, 教授 (20057508)
前川 杏二 自治医科大学, 教授 (40048939)
外山 敬介 京都府立医科大学, 教授 (90090505)
|
研究概要 |
1.目的. 感覚中枢の神経回路網は, 特徴抽出フィルターとして生体に与えられた刺激から一定の特徴を抽出し, それをより高次の中枢へ伝達する. 本研究は, この特徴抽出回路における可塑性発現のメカニズム解明を目的とする. 2.結果. 津本班員は, 成熟ラットと幼若ラットの大脳皮質視覚野ニューロンに対する興奮性アミノ酸拮抗薬の作用を切片標本を使って調べた. その結果, N-methyl-D-aspartate(NMDA)型受容体に対する選択的拮抗薬が成熟ラットでは無効であるのに, 幼若ラットでは有効であることを見い出した. 外山班員は新生仔ラットの大脳皮質視覚野に胎仔期ラットの外側膝状体を移植し, 神経回路の形成のされ方を主に電気生理学的に調べた. その結果, 胎仔外側膝状体がどこに移植されても, 正しく標的細胞見つけ出し, 正常な神経回路を形成することを発見した. 伊藤班員は, ネコの外側膝状体において免疫組織化学法を使いコレシストキニン, P物質, K物質等の活性ペプチドを含むニューロンが存在することを発見した. 岩村班員は, 無麻酔サルで体性感覚野(SI領域)にガンマアミノ酪酸の作動薬であるムシモールを微量注入した結果起る手指運動異常を解析し, SI領域は運動の習熟に密接に関連していることを発見した. 福島班員は, 学習能力を持ち, パターン認識能を自ずから身につけてゆく遠心性回路を含む階層型神経回路モデルを提唱した. 前川班員は, 仔ネコにおいて小脳への前庭及び視神経求心路の生後発達を調べ, 出生直後から14日齢頃迄前庭小脳に内顆粒層が形成される前に, 前庭情報を伝える苔状線維が一過性にプルキンエ細胞と異所性シナプスを作ることを発見した. 3.考察. 本年度は視覚系, 前庭系回路網の形成期及び発達期における特異的結合能の存在や異所性シナプスの一時的出現, さらには可塑性に関与する興奮性アミノ酸受容体の役割等の重要な発見があった.
|