研究概要 |
血管平滑筋の細胞レベルの研究は依然方法論的に困難な問題を抱え, 班員の幾人かはこの問題の解決に取り組んだ. 幾人かの班員は方法論的にある解決を見, 次のような新たな知見を得た. 1.モルモットの下大静脈平滑筋細胞にはT型とL型の2種のCaチャンネルが同程度の割合に存在するらしく, しかもL型Caチャンネルの開確率は心筋のそれの1/10程度である(大地). 2.イヌ冠動脈においてKチャンネル開孔薬のBRL34915は30mMまでのKClによる拘縮をFura-2のCaシグナルと共に部分的に抑制するが, 45mM以上のKClによる拘縮とCaシグナルは抑えない. したがって, BRL34915のK拘縮抑制作用は膜の過分極によるCa流入減少にあると考えられる. しかし, nicorandilとpinacidilの2つのKチャンネル開孔薬は45mM以上のKClによる拘縮をCaシグナルに影響せずに部分的に抑制する. したがって, 後の2つのKチャン開孔薬には過分極によるCa流入減少の他に, 細胞内Ca濃度低下以外の機序での弛緩作用のあることが伺われ, 新たな弛緩機序の解明が望まれる(平). 3.モルモットの肺動脈, 門脈の血管平滑筋細胞にも, 内臓平滑筋と同様に, CaによるCa遊離とIP3によるCa遊離の2つの機構が共存するCaストアとIP3によるCa遊離機構のみが存在するCaストアとが半々位に存在し, noradrenalineによる収縮の初期のCa動員には前者のストアが主として関与している(遠藤(實)). 4.平滑筋のミオシン軽鎖キナーゼを阻害する目的で合成したML-9はこの酵素のATP結合部位に結合して阻害し, ウサギ腸間膜動脈においてK拘縮とミオシン軽鎖のリン酸化を平行して抑制する(日高). 5.cDNA解析からプロティンキナーゼCの全構造を決定してみると多数の分子種が存在し, 各分子種に対する抗体を作って組織化学的に解析すると, 各分子種は臓器細胞に特有の分布をしている(西塚).
|