研究概要 |
この研究では, (1)論理的内容を自然言語で表現したテキストを読む際の情報処理過程を, 主として「誤解」の発生という面から分析し, (2)テキストの作成については, 誤解を避ける表現をするための, あるいは, 誤解を避けるために例示をしたり注解をしたりする際の一般的原則を明らかにし, (3)読み手については, 読み手にみずからの読解過程をチェックするようにさせたり, 誤解を防ぐようにさせるうえで, どのような方法がどの程度の効果をもつかを明らかにすることを目的として諸種の調査をおこなった. (1)説明の不完全さを発見させる課題:マークマンが小学生に対しておこなった調査(ゲームについて不完全な説明をしたときの子供の反応を調べる)を参考にして, 各種の説明について, 説明の不完全さや冗長さを指摘させる課題にたいする小学生や成人の反応を調査した. 幾何の問題やパズル問題の説明について問題の難易度を統制することは困難だが, 傾向として, これらの説明は, ゲーム説明にくらべて説明の不完全さを指摘することや不必要な情報を指摘することが困難なようである. (2)対立する観点や立場の相違の理解についての調査:どのような立場が存在して, それらがどのような関係にあるかがわかっていれば, 読み手は情報の位置づけがしやすくなるし, 書き手は整理した説明ができる. ジェイコブソン編の「プロアンドコン」から対立する意見や考えかたを選んで, どれとどれが対立するのか, どれとどれが同類なのかを判断させたが, この種の課題は困難なようだ. 思想上の地図(枠組み)をもたないことは, 抽象的な議論の理解を困難にする. 歴史観について述べたエッセイの読解においてもそのことが示された.
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