研究概要 |
1.有機配位子として20種類のβ-ジケトン化合物を作製し, それぞれEu及びTbの塩化物を用いて希土類キレート化合物を作製し, PMMAに溶解してスピンコート, シリコーンと混合, 又は有機溶媒に溶解したのちスピンコート等の方法によりけい光薄膜を作製した. 2.作製した薄膜について, それぞれのけい光強度及びけい光スペクトルすなわちけい光色彩の温度変化を測定した. その結果, それぞれの化合物に特有の温度範囲において, 試料温度の上昇に従い, 緑→黄緑→黄→橙→赤のけい光の色彩変化が得られた. 3.Tb化合物及びEu化合物を固溶体化することによ, それぞれ単に混合しただけの混合体に比べて分子間の励起エネルギー移動の確率が増し, 温度変化に対する色彩変化の感度の向上が成された. 4.種々のけい光薄膜におけるスペクトルの測定結果に基づき, Tb^<3+>によるけい光およびEu^<3+>によるけい光の強度比の温度依存性を求めた. 又, 色度図上における色度座標間の距離が色の差を与える均等色度図すなわちCIE1960色度図上にけい光の色彩を表示し, それぞれの温度における色度座標間の距離を測定した. 5.TbおよびEuが共存するけい光物質において, Tb^<3+>によるけい光とEu^<3+>によるけい光の強度の比や, けい光の色彩の色度座標と試料温度との間にはそれぞれ一義的な関係があることが見いだされた. 又, それぞれのけい光強度の比や色度座標は励起光源の強度や変動等に依存しないことが示された. 6.以上の結果から, 種々のTb及びEu化合物を選定し, その混合割合を調整し, 又これらの化合物を薄膜化することにより, 各々の温度範囲で物体表面の微細な温度分布のみならず, その温度の絶対値も測定できる温度センサの実現の可能性を示すことができた.
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