研究概要 |
研究の目的 蛍光プローブ法を用いて, 短時間で迅速に癌細胞を自動的に識別し得る計測学的細胞診を提供する目的で, レーザー励起蛍光スペクトル分析システムを開発した. また, 細胞レベルにおける蛍光スペクトル上で, 特異的に識別するため各種の蛍光色素を用い, 種々の細胞を標本にして各種のスペクトルを測定することも目的である. 研究の経過及び成果 最近の医療技術の進歩により, 難病である癌も, 早期に発見することにより, 治療可能になってきている. しかし, 現在行われている形態学的診断では集団検診は困難である. 著者らはそのために自動大量測定可能な分光学的診断システムを開発している. スライドガラス上に塗布した主体細胞を直ちに蛍光プローグ用色素で染色し, 1時間未満の放置の後, レーザー照射を行い, 蛍光スペクトルを観測するための, レーザー励起差分蛍光分光システムを試作した. 資料細胞に各種培養細胞を用いて, 蛍光プローグ色素にはヘマトポルフィリン誘導体などを採用して, 癌性判断の基礎となる蛍光スペクトルデータを種々の条件で測定した. その結果, 正常細胞と顕著に異なる癌性細胞特有のスペクトル形や蛍光強度, さらには波長シフトなどが見いだされた. また, スライドガラス上の細胞分布なども本システムを用いることで測定可能なことがわかった. 本年度試みた肺癌患者からの生検では, 腫瘍親和性に基づく蛍光強度と波長シフトが見いだされ本システムの有用性もたしかめられた. 今後, さらに生検のデータを蓄積して癌床応用を試みるつもりである.
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