研究概要 |
神経系における情報は活動電位として伝えられ, 筋細胞における収縮は細胞膜に発生する電気的興奮すなわち活動電位と関連して発生する. このような活動電位は, 通常, 先端の直径0.05μm以下の尖ったガラス微小電極を細胞に刺入して測定される. しかしながら, この方法では, 細胞が電極の刺入に耐えるほど大きいことが必要であり, また多数個の細胞, あるいは多数ヶ所の部位から活動電位を同時記録するということは技術的にほとんど不可能である. そこで本研究はこのような, 従来の電気生理学的方法の適用限界を補いうる方法として, 活動電位を光学的に多領域から同時測定するシステム開発を目的としてなされた. 本年度は特に分解能の向上についての検討を行った. この測定方法の実際の測定に当たって適用面における限界と困難性として, 現在, われわれが直面している問題点は三次元分解能である. この困難性を克服するためには新しい方法の開発が必要である. もう一つは二次元分解能(spatial resolution)である. これに関しては, 高倍率かつ閉口数のできるだけ大きい水浸レンズを用いて分解能の向上を図った. この場合, 問題となったのは, 倍率を上げるにしたがって背景光の強度が小さくなるため, S/N比が小さくなることである. これに対しては, 加算平均などの方法を試みることにより, 一個のディテクター当り5.2×5.2μm_2の領域から活動電位を検出するところまで, 分解能を上げることに成功した. 顕微鏡の倍率を変えたときS/N比と背景光強度の平方根の間に直線関係が得られたことから, われわれの測定装置で, 雑音は殆どショットノイズのレベルに近くなっていると考えられる.
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