研究概要 |
半導体レーザの発振縦モードは, 温度変動, 注入電流変化, あるいは次段光学素子からの反射戻り光により, 不安定に変動する. そしてモードホッピング雑音と呼ばれる過剰雑音を発生させ, 発振線幅を増大させる. 今年度は, 発振線幅増大現象と戻り光率との関係を理論解析し, また戻り光によるモード変動について詳細な実測を行なった. 理論解析では, 自然放出光発生時でのゆらぎ効果, 電子密度変化による線幅増大効果, および発振モード間の競合作用を含めた方程式を用い, 以下の結論を得た. (1)発振しきい値電流付近の動作では, 自然放出光量が多いためモードホッピング現象は生じない. (3)注入電流レベルが高い場合は, 利得抑制効果により安定化しやすい. (4)発振しきい値電流の1.2倍程度の時, モード競合が最も生じやすい. (5)モードホッピング現象を誘発する戻り光率は10^<-7>程度である. 実測では, レーザへ戻り光が混入させて不安定な動作になった場合について, モード変動, 発振線幅, および強度雑音を測定した. 得られた結果は, 以下のようなものである. (1)モードホッピング時での発振線幅の増加は, 1.6倍程度であり, 理論解析ほど大きくなかった. (2)1m以内程度の近距離からの戻り光の場合には, レーザ内部での発振モードがジャンプした. (3)数m以上の比較的遠距離からの戻り光の場合には, 戻り光率10^<-7>程度で反射点とレーザとで形成する外部共振器モードが出現し始め, 戻り光率に比例して強度雑音が増加した. (4)外部共振器モードが出現する場合は, モードホッピングとは別の現象であった. 次年度は, 外部共振器モードによる雑音増加現象について解析する.
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