研究概要 |
近年, 半導体レーザの性能向上が目ざましく, 光通信や光計測, 光情報処理などの広範な分野での実用化が進展している. しかしながら, さらに半導体レーザの本質的特性である周波数可変特性やコヒーレンス特性を利用する基本技術の確立が強く望まれている. 本研究の目的は, 連続かつ広帯域に周波変調(FM)可能な半導体レーザの動作制御法を開発するとともに, このレーザ特性を活用したFMヘテロダイン法により, 物体の距離や形状などの基本量の非接触で精密な光計測技術を確立することにある. (1)温度変調型半導体レーザの広帯域FM動作の実現 AlGaAsの波長約800nm帯の半導体レーザ(LD)の電極上にSiのマイクロヒータを接合し, 温度変調が可能な新型のLD素子を試作した. これによって活性層の温度変化量6℃, 連続FM幅230GHz, 応管周波数14Hzの値が得られた. これによって従来のLD特性に比べて大幅なFM特性の改善の可能性が見出された. (2)FMヘテロダイン計測法の高精度化と三次元計測への拡張 FMヘテロダイン法の高精度化を画るため, 装置の改良を進めた. その結果, 距離測定精度として約7μmとなり, 昨年度より大幅に改善された. また, 変位測定も試みて約1μmの高精度測定が可能となった. 次に, 本計測法による物体の三次元形状計測の可能性を検討した. レンズにより検出器上に散乱体表面の実像を結像させ, さらに参照光を重畳させ, 検出器開口を走査させて粗面体までの各点の距離を測定した. その結果, 距離約400mmでの粗面体に対し約45μmの精度で距離と形状の測定が可能であることが示された. 今後, さらに高精度化を行うため, 信号系の効率の改善や光学系の防振対策, LDのFM幅の拡大などを計画しており, 大きな改善も見込まれる.
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