研究概要 |
π中間子がdecayして生ずるミューオンとニュートリノのうちミューオンは物質の中に入り原子と衝突するとその元素特有の波長をもつX線を出すことから, この波長分析によって正常組織内に生じた異物を検出することが理論的に可能である. 別の研究により, 例えば肝臓の中に出来た悪性腫瘍は,正常組織としての肝臓とはその元素組成が異なることが判っているが, これを体外から非観血的に, 組成の違いを性格に見出すことは現在の技術では仲々難かしい. しかしミューオンによる組成分析はそれを可能にすると考えられている. 本研究では, 初年度に理論的に可能なミューオンによる組成分析が実際に臨床応用が可能か否かを検討した. 今年度は, 組成分析の基礎研究に用いるファントームの製作をし, X線波長分析のための検出器の製作を予定していたが, 研究費の配分が, 当初期待していたものより大巾に下廻ったため, ファントームの一部の製作にとどまった. 肝臓では正常組織と腫瘍との間には炭素, 酸素, 窒素の成分を少しずつ変えたファントームの製作を行なっている. 又骨そしょう症は骨からカルシュームが減少するが, その初期にはX線写真などでは診断不可能であるので, カルシュームの含有量を分析することによって, 早期診断に役に立つ事も考えられるので, 人体等価ファントームの製作の設計を行なった. これらのファントームを使用して, ミューオンの組成分析を行なうこと, 波長分析のための検出器の精度測定は来年以降に持越された.
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