研究概要 |
61年度にひき続き, 500MHz μ^+スピン共鳴装置を用いて主としてCS_2の中の反磁性ミュオンとMu置換フリーラジカルを研究した. CS_2の中で反磁性ミュオンがゆっくりと増加してくることは61年度中に見出したが, その温度依存性(簡単なクライオスタットを開発した)から, 活性化エネルギーの極めて小さなことが明らかになった. Mu置換ラジカルをCS_2の中に見つける試みは61年度では成功しなかったが, 今年度の実験によって, CS_2濃度の小さいとき及びCCl_4のような電子補促剤を加えたときは, MuCS_2と思われるラジカルが検出された. 以上の結果から, MuCS_2の形のラジカルが実際に生成するが, CS_2濃度が大きいとCS_2クラスターにμ^+とe^-が拡ったような状態が生れ, これがゆっくりと反磁性ミュオンが生長してくるようにみえる原因であるとする解釈を提起した. 上記の研究と併行してパルスラジオリシス実験を同じ系について行い, HCS_2ラジカルを検出し, これが, MuCS_2と同じような振舞いをすることをみつけミュオニウム化学と放射線化学によい対応関係のをることを示した. 金属錯体のμSRでは, 一連のアセチルアセトン錯体について, 反応性ミュオンの収率, 縦緩和, ミュオンスピン共鳴実験を総合的に行った. 中心金属がV, Cr, Mn のように常磁性のときは反磁性ミュオンの割合が1に近く, Zn, Alのような典型元素のときは反磁性ミュオンの割合が〜0.2であるという特異な知見が得られた.
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