研究概要 |
本課題では中間子(ミュオン)を用いたランダム磁性体における相転移及び関連する現象の研究を目的とした. 我々が初めて見出した準二次元XYスピングラス物質Rb_2Mn_<1-x>Cr_xCl_4の単結晶を作製し, それについてミュオンスピン緩和(μSR)の温度依存性を測定した. x=0.5の試料では, 磁気測定より30K(Tc)で常磁性相から強磁性相への, 10K(T_<SG>)で強磁性相からスピングラス相への転移が観測されたが, μSRスペクトルにはTcで顕著な変化は見られず, 温度を下げるとともに緩和率が増大する現象が見られた. この現象は系の二次元性のために, 秩序相においてもスピンの時間的ゆらぎが大きいことによるとして説明される. ミュオン実験に関連して, 電子スピン共鳴(ESR)の実験をランダム磁性体について行った. 準二次元XYスピングラスの他の例であるMg_<1-x>Co_xCl_2単結晶について, 広い周波数と磁場範囲でESRスペクトルを調べた. この系のパーコレーション濃度(Pc)は理論上0.295であるが, ESRの結果の解析より丁度この濃度で反強磁性相から常磁性相への転移磁場の値がゼロになることが明らかになった. Pc以下の濃度の試料では, 1個のCo^<2+>スピンによるシグナルとCo^<2+>スピンのクラスターからのシグナルが同時に観測された. これらの結果はスピングラスの本質を理解する上で重要な情報を与えている. ランダム磁性体の延長上にある高温超伝導体(La_<1-x>Sr_x)_2CuO_4の単結晶を作製し, μSRの実験を行った. x=0.04の試料(Tc=12K)では5Kでスペクトルの非対称性が小さくなり, また緩和率が増大した. このことは5K以下で磁気秩序が発生したことを示している. 最近, 理論的に高温超伝導物質でスピングラスの存在が予想されており, それとの関連で興味ある現象である.
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