研究概要 |
ポリモリブデン酸イオンのアルキルアンモニウム塩は固体状態でO→Mo LMCT帯の光吸収によりMo^<VI>→Mo^Vに還元されたd-d遷移に基づく赤褐色の発色を示し, 暗所でO_2の存在下で元の白色に戻るホトクロミズムを示す. 光還元をうけるサイトはアニオンを構成する縮合MoO^<26>八面体のうち特定の八面体サイトのみであり, その他のMoO^<26>八面体は光反応に関与しないことが明らかにされてきた. 特定のサイトでの光反応は分子の構造変化に全んど影響しないと仮定してきたが, この仮定が正しいかどうかを結晶化学的に確認することは重要である. しかしながら現在この固体化学反応による還元種の純粋試料をえることが困難である為, 過酸化体の構造解析を行うことにより元のアニオンの構造と比較検討することを試みた. そこで〔NH_3Pr^i〕_6〔Mo_7O_<24>〕・3H_2Oに注目しこれをH_2O_2により酸化してえられた〔NH_3Pr^i〕_6〔Mo_7O_<22>(O_2)_2〕・3H_2O(IPAM OX)の単結晶を用いて構造解析を行いえられた結果を〔NH_3Pr^i〕_6〔Mo_7O_<24>〕・3H_2O(IPAM)のMo-O結合距離, O-Mo-O結合角と比較し, 特定のMoObサイトにおけるperoce基の配位が分子全体に及ぼす影響を検討した. その結果IPAMOX中ではMo(5), Mo(6)のMoO_b八面体のterminalO原子O_2に置換されていることが判明し, これらの八面体サイトは光還元されるサイトでもあった. O_2配位によってその他のMoサイトではMo-O結合距離, O-Mo-O結合角, 結晶学的パラメータ共にほとんど影響されないことからホトクロミズムの反応過程でもほとんど分子構造変化はないものと結論された.
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