研究概要 |
本年度は次の2点で所期の成果が得られた. 1.微小液滴, 液膜内の色素分子の蛍光寿命測定を顕微鏡下で行なうことにより, 濃厚均一溶液中での光物性を, 再吸収効果に左右されないで極めて容易にな行う方法を確立した. 高濃度溶液の液滴の粒径が数ミクロン以下になると, サイズ効果が現われることが初めて明らかになった. このような研究はこれまで皆無で, 液滴物性の新しい研究法となることが期待される一方, 化学修飾シリカゲル等, 色素を担持した微粒子において, 分子間の距離は均一濃厚溶液に匹敵するので, 液滴や, 液膜での基礎研究が強く望まれるわけである. 2.アミノシリカゲルに担持したエリスロシンの種々の液固界面下での蛍光寿命測定, これまでに種々の色素を化学修飾したシリカゲルに担持して蛍光寿命測定を行なってきたが, 担持法が今ひとつ信頼のおけるものではなかった. しかし今回はDCCをカップリング促進剤として用いることにより, 色素を強固に担持することができた. 担持量と反応条件の関係を定量的に求めた. 得られたエリスロシン担持シリカゲルミクロン粒子を, 種々の溶媒中に存在させて特異な液一固界面を実現させ, かつ1個1個粒子を選別してから蛍光寿命を測定することを可能にするために, ミクロキャピラリーカラムを用いることが最も有効であることを見出した. もちろん脱気することも可能である. このように暫新な測定法で得られた結果は, a)担持したエリスロシンの蛍光減衰は常に非指数関数的である. b)1つの成分は常に500ps前後の寿命で, シラノール基の影響を反映したものである. c)しかしながら均一溶液中の寿命と比べて, 全く同じ寿命とならないのは, 担持された色素が完全に溶媒分子に取囲まれてはいないことを示す, 等々興味深いものであった. これらの成果は, 論文として寄稿した.
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