研究概要 |
ポリパラフェニレン粉末を光触媒とするカルボニル化合物の可視光(>400nm)還元反応を, メタノールを溶媒としトリエチルアミンを電子供与体とする系で検討した. E^<red>_<1/2>=-2.0Vvs.Ag/AgNO_3より貴なケトン類が光還元され, 2電子還元体のアルコールを収率よく与えた. 2電子目の還元電位が高くカップリング反応における立体障害の少ないアルデヒト類からは1電子還元体であるピナコール体が主生成物となった. この結果をふまえオレフィン類の可視光還元へ発展させた. 還元電位E^<red>_<1/2>=-1.80Vvs.Ag/AgNO_3のフマル酸ジメチルで反応が効率よく進行し, オリゴマーと共にコハク酸ジメチルが24%収率で生成した. 還元電位E^<red>_<1/2>=-2.00Vvs.Ag/AgNO_3と極めて卑なシス及びトランスーP-シアノシンナムニトリルの光還元反応では, 光照射直後から早い速度でシスもしくはトランス体からのトランスもしくはシス体への光異性化が起こり, 還元体であるジヒドロ体をそれぞれ70%と85%の好収率で生成した. 還元電位が大きく卑なオレフィンの光還元機構を解明するためにメタノールーd_1を溶媒としてトランスーP-シアノ桂皮酸メチルの光触媒反応を行った. 基質が半減するまで反応を行い, 回収した桂皮酸メチルと還元生成物の重水素化割合をマススペクトルにより検討し, その光還元反応が1電子還元生成ラジカルの不均化反応によって進行するものと結論した. 重合反応やシス・トランス異性化反応も1電子還元生成ラジカルを経由するとして矛盾なく説明できる. 用いたポリパラフェニレンのバンドギャップ(2.90eV)とイオン化ポテンシャル(5.53eV)を測定し, 伝導帯と価電子帯のポテンシャルをそれぞれ-2.21Vと0.69Vvs.Ag/AgNO_3と決定し, 光触媒反応を矛盾なく説明しうるエネルギー構造が明らかとなった. 他の研究計画は今後展開する予定である.
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