研究概要 |
多くの光化学プロセスにおいて, 広い波長領域で有効に作用する増感剤の開発は最も重要な研究課題の一つである. 我々は数年来の基礎的研究によって増感剤としての機能性色素を開発するための予備的成果を蓄積してきた. そして, その成果をもとにして, 近赤外光領域で有効な長寿命増感剤を新規に開発することを目的として本研究を行った. そして以下の研究成果をあげるとともに, 今後の研究の発展について計画を行った. 1.MO法を用いて増感剤としての近赤外吸収色素の合成デザインを行い, 近赤外吸収フエンレンジアミン系2:1型ニッケル錯体色素, ジチオラト系2:1型ニッケル錯体色素と分子間CT型1R色素の合成を行った. そして, ニッケル錯体色素についてはそれ自身が1R色素として機能するとともに, シアニン系1R色素の退色防止剤としても有効に作用することを見出した. また, カルバゾールーナフトキノン系分子間CT型色素については, レーザプリンター用OPCとしての評価も行った. 2.色素増感剤の溶液中と固体薄膜上における色素レーザ光による光退色挙動を, 分光器と大型試料室(主要備品), さらにパワーメータを用いて定量的に検討することによって, 有機色素材料の光退色におよぼす環境因子と光源, 特に波長選択性について検討を行い, フオトンモードとヒートモードによる退色の差異について検討考察した. 3.一重項酸素フエンチ中にUV吸収能をもたせることによって退色防止効果を向上させた. また, それらの応用によって新規な感熱記録用増感剤の開発や画像安定性に優れた新規な色素の合成に成功した. 以上の研究成果は関連論文を含む14報(1987年)を通じて公表した. 主要備品も有効に利用できており, 今後は以上の研究成果をもとに, 本研究課題をさらに発展させていく予定である.
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