研究概要 |
分子内にアセチレン単位3個持つトリオキサヘキサシラシクロペンタデカトリインと種々の遷移金属錯体による分子内3量化に関する前年度の研究成果を基にして, 本年度は分子内にアセチレン単位を2個有する環状ポリシロキサンを幾つか合成して, これらと鉄カルボニル錯体との反応による分子内2量化反応を検討した. ジシランあるいはトリシラン鎖を持つ大環状ジアセチレンであるテトラシラシクロオクタジイン, ペンタシラシクロノナジインおよびヘキサシラシクロデカジインをトリメチルアミンオキシドを用いて酸化し, 目的とする3種のアセチレン単位を分子内に2個持つ環状ポリシロキサン1__〜, 2__〜, および3__〜をほぼ定量的に得た. これらはそれぞれ架橋鎖の原子数が(3, 3), (3, 5)および(5, 5)の環状ジアセチレンであって, それぞれ環サイズを異にい, 架橋鎖に化学的に安定なジシロキサン鎖を持っているのが特徴である. ここでは, これらの環状ジアセチレンの鉄カルボニルによる2量化反応はメチレン鎖と対照的にケイ素鎖が存在する場合は顕著な環効果が観測された. すなわち, 1__〜, 2__〜および3__〜からは一般的に予想されるシクロブタジエン型生成物が得られることなく, それぞれこれを全く異なる型の化合物, すなわち1__〜からはトリメチレンメタン型鉄2核錯体, 2__〜からは共役エンイン構造を有する双環性異性体および3__〜からは対応するメチレンシクロプロペン鉄錯体が得られた. これは最も基本的な環状共役化合物の一つであるメチレンシクロプロペンの最初の合成例となった. ここでは共通にアセチレン単位の2量化とともにケイ素基の1, 2-転位が起こっている. これら生成物の生成経路は中間にビニリデン錯体を経るとして最も合理的に理解できるように思われる. これには今後種々の面から検討を加えることが必要であろう.
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