研究概要 |
本年度は, ローリボース部分の役割を昨年度に引続いて更に詳細に検討した. またB_<12>部分でのアポ酵素との相互作用が炭素-コバルト(C-Co)結合の活性化において果たす役割についても研究し, 以下の成果を得た. 1.補酵素機能発現及びC-Co結合活性化におけるローリボース部のβ-ローリボフラノース環と官能基の役割 合成したリボース部修飾アナログのうち, 2′-デオキシ体と3′デオキシ体は補酵素活性を一部保持していたが, 天然補酵素と同じ官能基をもちリボース部の2′と3′位の間で切断されている2′, 3′-セコ体及びその2′, 3′-ジアルデヒド体は, 酵素に結合するにもかかわらず全く補酵素活性を示さなかった. 従って, 補酵素機能発現におけるリボース各部の重要性はβ-ローリボフラノース環>>3′-OH>2′-OH>-O-の順であり, リボース部の重要性はその官能基によりもむしろ5員環の硬い構造にあることが明らかとなった. 補酵素として活性な前2者のアナログのC-Co結合は酵素反応中にホモリシスしたが, 不活性な2′, 3′-セコ体のそれはアポ酵素による活性化を受けないことを示した. 一方その2′, 3′-ジアルデヒド体は不活性であるにもかかわらず, アポ酵素に結合するとC-Co結合が活性化され, ゆっくりとホモリシスすることを見出した. 2.B_<12>部分でのアポ酵素との相互作用によるC-Co結合不安定化の実証 立体的にかさ高な上方配位子をもついくつかの不安定なアルチキB_<12>を合成し, 遊離の状態と酵素に結合させたときのC-Co結合の開裂速度を比較した結果, ネオペンチル, イソブチル, シクロヘキシルの各B_<12>はアポ酵素の共存によりC-Co結合の開裂が著しく加速されることを見出した. これはB_<12>部分がアポたんぱくに結合するだけで, 上方配位子での特異的な相互作用がなくてもC-Co結合が一定の不安定化を受けることを初めて実証したものである. 酵素の反応におけるその役割を考察した.
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