研究概要 |
4〜5族前周期金属錯体の特性を明らかにすると同時にその特性を生かした有機合成を開発するために以下の研究を行なった. 1.チタンおよびニオブのジエン錯体の単離と反応 かさ高いペンタメチルシクロペンタジエニル基を持つチタンージエン錯体(C5Me_5)T:Cl(diene)の単離に成功しX線解析, NMR測定より構造決定を行なった. ジエンの1または4位に置換基がある場合にはプロン構造を, 2または3位に置換基がある場合にはスパイン構造を取ることを初めて明確にした. ニオブのジエン錯体は先に明らかにしたタンタルのジエン錯体と類似構造を取ることが多いが, 例外として(C_5H_5)Nb(butodiene)_2の時には, S-トランスおよびS-シス構造のブタジエンが一分子づつ配位した錯体が生成することを明らかにした. この錯体はブタジエン錯体の優れた重合触媒となり, 室温で15万以上の分子量を持つポリブタジエンが収率よく得られた(トランスー1,4-構造). 単離した錯体が重合活性を持つ例は珍しく, ニオブ化合物で触媒作用を示す例はこれまでに報告はなく重要な知見と言える. 2.チタンおよびニオブのアリル, オレフィン, アルキン錯体の合成 三価のチタンーアリル錯体については構造が確定されたものは一例しかなく十分研究が行われていない. 一連のアリル化合物を単離し解析し反応性を検討した. ニオブの(オレフィン)ヒドリド錯体とジエンの反応によりπ-アリル錯体を, アセチレンとの反応でニオブアルキル(アセチレン)錯体を得ることを初めて明らかにし, これらとケトン, アルデヒドなど親電子試剤との反応を検討した. 4族のチタンーアリルやジルコニウムージエン錯体に較べ反応性は劣り選択性も低下した. この性質を利用して高選択的反応を実現するためには第二成分が必要と考えられカチオン錯体への誘導を検討している.
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