研究概要 |
1.5員環を形成する二座配位子をもつ5配位のhypervalentな有機アンチモンおよびビスマス化合物を合成した. 5種の異なる配位子をもつこれらの化合物は熱的に安定であり, 純粋な化合物として単離できた. 5配位アンチモン化合物にメチルリチウム及びアリールリチウムを当量反応させると6配位アート錯体が定量的に生成した. これらのアート錯体には3種の位置異性体が存在し, それらの構造と安定性を決定した. 次にこれらアート錯体のプロトノリシスを検討した. メチルリチウムとのアート錯体を各種のプロトン酸でクエンチすると, アリール基の方がメチル基より優先的に解裂されるが, 両者の反応性の比はプロトン酸の強度に依存した. 一方, アリールリチウムとのアート錯体のプロトノリシスの反応性はプロトン酸の強度およびアリール基の電子的効果に対しても殆ど影響されなかった. ビスマスのアート錯体は熱的に不安定であり, 詳細な検討はできなかった. しかし, 二座配位子を二つもつビスマスアート錯体は熱的に安定であり, その異性化・プロトノリシスを詳細に検討した. 2.5配位のhypervalentなビスマス化合物のハロゲノリシスの選択性を検討した. 塩化スルフリルおよびピリジニウムペルブロミドによるビスマスー炭素結合解裂反応の選択性はエチニル>アルキル>アリールの順であった. 選択性と結合の性質について検討した. 3.種々のアリール基をもつ非環状5配位アンチモン化合物の合成法を検討した. これらの間には50-60°Cで異性化平衡(スクランブリング)がおこることを見い出した. 200°C付近で, 還元的脱離によりビアリールを定量的に生成した. 生成する3種のビアリールを正確に定量し, 還元的脱離の選択性と関係する軌道の対称性を詳細に検討し, 理論的予想に対する始めての実験的アプローチを行った.
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