研究概要 |
1.コレステロールアナログの分子設計と合成 (i)遠隔官能化 昨年度報告したアルコキシラジカルによるコレスタンならびにアンドロスタン骨格の遠隔官能化生成物, 副生成物の構造を別途合成ならびに各種スベクトルにより明らかにした. ついで遠隔官能化に想定された中間体を別途合成して反応を行い機構を明らかにした. 電極反応を用いるステロイド疎水部へのアセトアミド基導入に関しては, 昨年度にひきつづき機構と選択性につき検討を加えた. (ii)コレステロールA環の芳香族化 アルコキシラジカルのβ-開裂をキーステップとするステロイドA環の芳香族化の新手法を開発し, エストロンの合成に成功した. (iii)ヘテロステロイドのデザインと合成 昨年度にひきつづき, ステロイドケトンの室温, 中性の条件下におけるオキサステロイドなどヘテロステロイドへの高効率変換に関する新手法の有効性を吟味し, 11-オキサプロゲステロンを, 11, 20-ジオキソー5β-プレグナンー3α-オールアセテートから11工程で合成することに成功した. 2.リポソーム膜中におけるコレステロールアナログの物理化学的挙動 昨年度にひきつづき, 本年度も, コレステロールと合成コレステロールアナログを添加したDPPCリポソームについて, 脂質二分膜中での挙動を蛍光分析または, 示差熱分析などにより詳細に検討した. 5種の合成オキサコレスタン, 3-デヒドロコレステロール, 5α-コレスタンとコレステロールをリボソーム二分子膜中で比較した結果, 3-オキサー, 6-オキサー5α-コレスタンは, リポソーム膜中での物理化学的挙動がコレステロールと極めて類似していることを, 明らかにした. これは, H_2Oを介してオキサアナログの骨格を構成する酸素とリン脂質の間に, 水素結合が生成されるためと推定され, コレステロールの動物細胞膜内の機能との関連において興味深い.
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