研究概要 |
本研究の目的は, 将来人工容器内で安定で効率のよいタンパク質合成システムをつくり上げるためにタンパク質の生合成系において本質的に必要最小限の因子を割出すことが第一である. このため最も単純なタンパク質生合成系としてミトコンドリアをとりあげ, モデル系としてとくに今年度はそのアミノ酸転移RNAについて調べた. ミトコンドリアの蛋白質合成系はサイトゾルやバクテリアのそれとはことなっていて, かなり単純化されている. 哺乳動物では最も単純化されて, 酵母では複雑化されている. 進化的にその中間になるものの一つとしてヒトデを材料に加えて研究を進めている. ミトコンドリア遺伝子に見られる異常暗号の解読様式や, 異常構造を持ったtRNAの構造と機能を調べるためには, ミトコンドリアからリボゾーム, 酵素類, tRNAなどを単離し, in vitroのタンパク質合成系を構築しなければならない. 我々はすでに牛心筋より, 異常な構造をもつtRNA^<ser>(AGR)の大量調整法を確立した. また, 新たにハイブリタゼーション法を使うことによって, アイソアクセプターtRNAを区別して検出できるような方法を作った. これらのtRNAを用いて, ミトコンドリアにおけるアミノアシル化反応の特異性を調べた. マウス肝ミトコンドリアより活性リボゾーム画分を得て, これと牛心筋ミトコンドリアS100画分との組み合わせで, ポリU-依存ポリフェルアラニン合成活性の発現を見出した(tRNAは大腸菌由来). 併しミトコンドリアのtRNAを用いたタンパク質合成系はまだ確立されていない.
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