研究概要 |
本年度は, 前年度までの研究成果をもとにセラミック半導体ヘテロ開接合系における溶媒識別の機構の解明および得られた実験データの解析法の開発を行なった. また新しい試みとして, 界面酸塩基性制御によるヘテロ開接合系湿度センサの材料設計を行なっており, 成果が上がりつつある. 溶媒識別の機構については, 並行して研究を進めているガス分子の分子識別の研究成果と比較検討を行なった結果, 溶媒によるI-V特性の変化は溶媒分子とヘテロ接合を構成するセラミック半導体との電気的な相互作用のカップリングによるものであると予測された. このカップリングにより, ヘテロ開接合系における分子識別機能, 自己修復機能が発現していると考えられる. 実験データの評価法については, 現在独自の手法を開発しつつある. ヘテロ開接合による情報の多くはI-V曲線など視覚に訴える2次元情報であるのでそのままの形では客観的評価は困難である. 現在これらの情報を客観的情報に変換し, 溶媒識別をいくつかの数値にて行なうことを試みている. I-V曲線のフーリI展開により, フーリエ系数とI-V曲線が囲む図形の面積により評価が可能であることを示唆するデータが得られ, 類似の構造, 化学的性質をもつ溶媒の識別の可能性がでてきたところである. 特定の溶媒分子の識別を行なうためには, 先に述べた評価法の開発とともに素子の材料設計が重要な課題である. 本年度より溶媒識別素子の材料設計の指針とすべく, ヘテロ開接合を構成するセラミックスの酸塩基性が, その表面プロトン伝導に与える影響を調べ表面状態が開接合界面の物質輸送に与える効果を検討している. 現在のところ, プロトン輸送と構成物質の電気陰性度に密接な関係があることがわかり, 高感度湿度センサの材料選定のための有力な情報源となる他, 溶媒識別のための材料設計の一つの大きな指標が得られた.
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