研究概要 |
新規な補酵素ピロロキノリンキノン(PQQ)の化学的な機能の解明と, その成果にもとづくキノプロテインモデルの開発を指向して研究を展開させ以下のような成果をあげた. 昨年度カチオン性ミセルを場とすることによってアラルキルアミンやアミノ酸類に対するアミンオキシダーゼモデルを構築したが, 本年度その場を借りてアルキルアミンに対する酸化能力を測定した. その結果混合ミセルを形成し易いと考えられる炭素鎖長4以上の直鎖アルキルアミンで高い活性を示し, 特に炭素鎖10以上のアミンでは極めて高い活性が認められた. さらにアミノ基の近くに側鎖がある場合, 活性は急激に低下し, 酵素モデルへの基質の取り込みによる立体障害が明らかにされた. 酸化脱水素酵素の重要な基質としてグルコースをはじめ各種の糖類とPQQの反応を検討したところ, 糖類の環状骨格から鎖状骨格への変換が反応を支配すること, またそのエンジオール中間体が鍵になっていることを明らかにした. 環状から鎖状への変換速度と, 糖の対応する酸化物への反応速度に良好な相関々係が見られた. エンジオール型構造を始めからもっているグルタルアルデヒドやアスコルビン酸では非常に高い活性が認められ前記の推定を裏づけた. アルデヒドは求核試薬(シアノイオン, チアゾリウムイオンなど)の存在下カルボンル基が活性化されて, エンジオール等価構造をもつ. 従ってこのような条件下でPQQと反応させたところスムーズな酸化還元サイクルが認められ, このことはアルデヒド酸化酵素においてPQQが重要な役割を果していることを示している. 現在モデル化合物の設計と反応場の設計について検討中であり, 次年度にキノプロテインモデルを構築する予定.
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