研究概要 |
天然生体膜は, リン脂質・膜タンパク・イオノフォアなどの生体機能物質から構成され, 選択的な物質輸送や, 濃度勾配に逆らった能動輸送が達成されている. このような選択的または特異的な生体膜輸送機能を分子レベルで設計できれば, 省エネルギー・省資源時代に適応した精密分子輸送膜の開発に新しい視点を与えるものと期待される. 本特定研究では, 物質認識選択性に富んだ「天然」・「人工」輸送機能性分子(イオノフォア)の特性を活用した精密輸送膜系の開発を行なった. (1)天然イオノフォアの新しい輸送機能の開発 サリノマイシンをはじめとする非環状ポリエーテル系抗生物質は, 天然生体膜系においてはアルカリ金属イオンを選択的に輸送するが, これらを含む合成機能膜の設計によって, アミノ酸エステル塩や重金属・遷移金属イオンの新しい輸送膜の開発に成功した. (2)人工イオノフォアの分子設計とその応用 新しい人工イオノフォアとして, 三次元的配位立体化学をもつ一連の『アームド・ホスト化合物』を分子設計した. 特に, 鎖状トリポード型ホスト化合物は, 従来より知られている環状ホスト化合物と比較して, 有機基質に対する輸送選択性が高いことを見い出した. 以上のような「天然」・「人工」イオノフォアの特性を相補的に活用することによって, バラエティーに富んだ輸送機能膜を設計できることが明らかとなった.
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